「それじゃあ行ってくるよ!」
「いちいち報告しに来なくて結構よ」
「相変わらずつれないなあ。この素晴らしい瞬間を他でもない君と分かち合おうという僕の気持ちは伝わらないのかい?」
「帰りに小麦粉買ってきて。あたしが留守だったらドアに掛けといてくれればいいわ」
「そんなの覚えている余裕が果たして今日の僕にあるのか」
「…………」
ジュディに指摘されて、私なりにいろいろ考えた。
いつも意地ばっかり張って、悪態ついては困らせて、その度に後悔して。なのにまた同じことを繰り返して……。
ほんと、私はいつもそう。
意地悪がしたいわけじゃないのに。本当はそうじゃなくて……そうじゃなくて、――幸せになってほしいのに。
自分のつまらない意地なんかで邪魔をしたりしないで、本当に大事に思っているのなら、私がするべきことは――笑顔で見送ることなんだ。
「よかったわね。やっとここまで来たんだ」
「ベル! 君も祝福してくれるのだね!」
「勿論よ。アンタは今日まで、毎日毎日必死に彼女にアプローチして、やっと直接会ってもらえるところまで辿り着いたんだもの。幼馴染のあたしが一番に喜ばなくてどうするのよ」
「あぁ、やっぱり君も、本心ではそんなふうに思ってくれていたのか! きっとそうなんだと信じていたよ。僕の知っているベロニカはそういう人だからね!」
「おめでとうダニー。あたしも嬉しいよ。彼女に会ったらよろしく伝えて。知らない森なんかに行って迷子になるんじゃないわよ?」
「あぁ! ありがとうベル! 君の気持ちは確かに受け取ったよ! それじゃあ、行ってきます!」
――ちゃんと、笑顔で。
「行ってらっしゃい」
私も少しは、素直になれたのかな……?
▽▼▽▼
……予想はしていたけれど、やっぱり一切連絡を寄越してこない。
「『他ならぬ君と共有したいんだ!』とか言っておいて、結局目の前にあの子がいたら、あたしのことなんか構ってる場合じゃなくなるのよね」
わかってた。別にいいのよ?
でもちょっとだけ気に入らない。それだけのこと。
「! 電話?」
『ベル、私。今ちょっといい?』
「あぁ、なんだジュディか」
『なんだはないでしょ。アンタの相談事についてわかったことを話そうと思って電話したのに』
「え? あぁ、【悪魔】に関してのこと、何かわかったの?」[p]
『ん~、まぁ、わかったというかね。いい、ベル? これはあくまで、私の想像の話。それ以上のことではないから、あんまり真に受けないで、話半分ぐらいで聞いてね?』
「? えぇ。わかったけど……」
『あのね、――』
『彼女の動画、カフェで見せてもらったものも含めて、あれからまた全部よく見てみたんだけど』
「うん」
『2週間前ぐらいに投稿された、【質問にお答えします】っていう動画、わかる?』
「えーと……確か、視聴者が前回の動画のコメント欄に質問を書き込んで、その質問にアミーリアが答えるっていう、よくある企画よね?」
『そう、それ。でね、その中に、「アミーリアさんは悪魔の仔だと言っていますが、ご両親はどんな方なんですか?」っていう質問があったの、覚えてる?』
「あぁ、そんな質問あったかも」
『それに対して彼女は、「父は私だけを閉じ込めて、自分は人間のふりをして外で働いています。母は心を病んで屋敷に閉じ篭り、自室から出てきません」、……そう答えているの』
「うん、確かそうだったわね。覚えているわ」
『よく考えてみて。これ、「母親に関しては」閉じ篭っているという情報だけで、殆ど何も言及していないのよね』
「……? えぇ、確かにそうね」
『今投稿されている全部の動画を隈なく見ても、彼女は自分が悪魔の仔だとは言っていても、【両親とも悪魔だとは】一言も言っていないのよね』
「…………どういうこと……?」
『悪魔は今のところは、言ってしまえば空想上の存在みたいなものだから、悪魔論も当然、これが正解っていうものはないの。だから色んな学者が独自の悪魔論を唱えているのよ』
『私はここで、ある神学者の悪魔論を思い出した。名前までは覚えていないけれど。これに当てはめて考えると、ベルが言っていたいくつかの違和感も、全部1つに繋がるのよ――』
「いちいち報告しに来なくて結構よ」
「相変わらずつれないなあ。この素晴らしい瞬間を他でもない君と分かち合おうという僕の気持ちは伝わらないのかい?」
「帰りに小麦粉買ってきて。あたしが留守だったらドアに掛けといてくれればいいわ」
「そんなの覚えている余裕が果たして今日の僕にあるのか」
「…………」
ジュディに指摘されて、私なりにいろいろ考えた。
いつも意地ばっかり張って、悪態ついては困らせて、その度に後悔して。なのにまた同じことを繰り返して……。
ほんと、私はいつもそう。
意地悪がしたいわけじゃないのに。本当はそうじゃなくて……そうじゃなくて、――幸せになってほしいのに。
自分のつまらない意地なんかで邪魔をしたりしないで、本当に大事に思っているのなら、私がするべきことは――笑顔で見送ることなんだ。
「よかったわね。やっとここまで来たんだ」
「ベル! 君も祝福してくれるのだね!」
「勿論よ。アンタは今日まで、毎日毎日必死に彼女にアプローチして、やっと直接会ってもらえるところまで辿り着いたんだもの。幼馴染のあたしが一番に喜ばなくてどうするのよ」
「あぁ、やっぱり君も、本心ではそんなふうに思ってくれていたのか! きっとそうなんだと信じていたよ。僕の知っているベロニカはそういう人だからね!」
「おめでとうダニー。あたしも嬉しいよ。彼女に会ったらよろしく伝えて。知らない森なんかに行って迷子になるんじゃないわよ?」
「あぁ! ありがとうベル! 君の気持ちは確かに受け取ったよ! それじゃあ、行ってきます!」
――ちゃんと、笑顔で。
「行ってらっしゃい」
私も少しは、素直になれたのかな……?
▽▼▽▼
……予想はしていたけれど、やっぱり一切連絡を寄越してこない。
「『他ならぬ君と共有したいんだ!』とか言っておいて、結局目の前にあの子がいたら、あたしのことなんか構ってる場合じゃなくなるのよね」
わかってた。別にいいのよ?
でもちょっとだけ気に入らない。それだけのこと。
「! 電話?」
『ベル、私。今ちょっといい?』
「あぁ、なんだジュディか」
『なんだはないでしょ。アンタの相談事についてわかったことを話そうと思って電話したのに』
「え? あぁ、【悪魔】に関してのこと、何かわかったの?」[p]
『ん~、まぁ、わかったというかね。いい、ベル? これはあくまで、私の想像の話。それ以上のことではないから、あんまり真に受けないで、話半分ぐらいで聞いてね?』
「? えぇ。わかったけど……」
『あのね、――』
『彼女の動画、カフェで見せてもらったものも含めて、あれからまた全部よく見てみたんだけど』
「うん」
『2週間前ぐらいに投稿された、【質問にお答えします】っていう動画、わかる?』
「えーと……確か、視聴者が前回の動画のコメント欄に質問を書き込んで、その質問にアミーリアが答えるっていう、よくある企画よね?」
『そう、それ。でね、その中に、「アミーリアさんは悪魔の仔だと言っていますが、ご両親はどんな方なんですか?」っていう質問があったの、覚えてる?』
「あぁ、そんな質問あったかも」
『それに対して彼女は、「父は私だけを閉じ込めて、自分は人間のふりをして外で働いています。母は心を病んで屋敷に閉じ篭り、自室から出てきません」、……そう答えているの』
「うん、確かそうだったわね。覚えているわ」
『よく考えてみて。これ、「母親に関しては」閉じ篭っているという情報だけで、殆ど何も言及していないのよね』
「……? えぇ、確かにそうね」
『今投稿されている全部の動画を隈なく見ても、彼女は自分が悪魔の仔だとは言っていても、【両親とも悪魔だとは】一言も言っていないのよね』
「…………どういうこと……?」
『悪魔は今のところは、言ってしまえば空想上の存在みたいなものだから、悪魔論も当然、これが正解っていうものはないの。だから色んな学者が独自の悪魔論を唱えているのよ』
『私はここで、ある神学者の悪魔論を思い出した。名前までは覚えていないけれど。これに当てはめて考えると、ベルが言っていたいくつかの違和感も、全部1つに繋がるのよ――』


