桜の下で君を待つ


 桜が、舞っていた。

 風が吹くたび、薄桃色の花びらが空へひらひらと舞い上がっていく。一枚…また一枚と…

 「……また会えるよね?」

 少女は、涙をこらえながら尋ねた。
 目の前にいる少年は、少しだけ寂しそうに笑った。

 「会えるよ」
 「ほんと?」
 「うん。約束する」

 少年は桜の木を見上げてから、少女に小指を差し出した。

 「高校生になったら絶対戻ってくる。そしてまた、ここで会おう」

 少女も小さな小指を絡める。

 「絶対だよ」
 「うん。絶対」

 二人だけの約束。あの日から、十年が経った…

 *

 「……桜、咲いてる」|

 高校二年の春。

 私――佐倉小春(さくらこはる)は、校庭の桜を見上げていた。

 なぜだろう。この景色を、ずっと昔から知っているような気がする。

 胸の奥が、少しだけ痛む。でも、その理由を私は知らない。

 ただ一つだけ。私はまだ知らなかった。

 十年前のあの日からずっと、彼女との約束を忘れずにいた少年がいることを。

 そして、その少年と――この春もう一度、出会うことを。