§
絵を描き始めてから数日が経つ頃には、天月さんにも少しずつ細かな形が入り始めた。
大きな色だけだった顔には目鼻立ちが現れ、筆を持つ手にも指の一本一本が見えるようになっている。
今日は顔を中心に描き進めていた。
少し離れたところでは、天月さんも自分のキャンバスに向かっている。僕はその横顔を見つめる。
一週間描き続けた形だから、以前ほど手が止まらない。
天月さんが少しだけ眉を寄せたのが目に映る。
自分の絵になにか気になるところがあるらしく、そのまま腕を組んで画面を睨んでいる。
「・・・・・・・・・・・・」
僕は筆を持ったまま待った。
今描いている目元とは少し違う。
しばらくすると、天月さんは腕組みを解く。考えが纏まったのか、さっきまで寄っていた眉から力が抜けていた。
再びキャンバスに向かう彼女を見て、僕もまた筆を動かした。
天月さんが動けば、僕の手も止まる。また近い角度に戻ればそこで続きを描く。
そうやって繰り返し見える形を追って、少しずつ整えていく。
顔を描き進めた後は、筆を持つ手へと視線を移した。
細い指が筆の軸を挟み、手首は僅かに内側に返っている。キャンバスに色を置く時だけ少し力が入り、筆を離すとまた緩む。
僕はその動きを何度か確認して見てから、自分のキャンバスに向き直り、筆を入れていく。
指先が少し太く、手首の返り方も浅かったので、指先を少し細くし、手首の角度も僅かに直す。
すると腕から筆先までの流れが自然に繋がった。
手先を描いた後は、髪に移る。
天月さんの栗色の髪。
彼女が俯くと、前へ流れた髪が頬の脇に落ちる。
その形を見てから自分の絵に戻ると、今描いている髪は肩を覆い過ぎていて、首から腕へ続く形が少し重く見える。
僕は肩に落ちる髪を僅かに減らした。
すると上半身の重さが抜けて、右へ伸びる腕との釣り合いがよくなった。
そうやって何度も天月さんとキャンバスを往復しながら、一つずつ形を整え、色を重ねていく。
昼を過ぎた頃には天月さんの輪郭がずっと明確になっていた。
横顔も、手も、髪も、それぞれにちゃんと見覚えがある。
僕は手応えを感じながら、キャンバスに前のめりになる。
§
それからも制作は少しずつ進んでいき、そうして描いていくうち、画面の中の天月さんは少しずつ纏まりを見せていく。
気付けば八月も終わり、九月に入っていた。
キャンバスには遠目からでも天月さんだと分かる姿が出来上がっていた。
「これ、かなり出来てきたね」
ふと背後から俯見先生の声が聞こえた。
振り返ると、俯見先生は僕の肩越しに三十号のキャンバスを眺めていた。
「絵を描いてる時の天月さんって、こんな感じするよね」
それには僕も頷く。
天月さんは、普段は抜けてるところもあるけれど、いざキャンバスの前に立つと雰囲気が変わる。
なんというか、静謐とした空気を漂わせるのだ。
「周りに人がいるのに、一人だけ別のところにいるみたいなね」
「ですね」
するとそこへ、「なんの話ですかー?」と近くにいた女子部員が反応してこっちに来た。
「お、見上くんの絵、だいぶ進んでるじゃん!」
するとその声を聞いて、他の部員も歩み寄ってくる。
「うわ、見上すげぇ。天月そっくり」
「これが見上の本気か」
「大袈裟な」
「確かに、絵描いてる時の天月ってこんな雰囲気あるよな」
「分かるー。なんか、近寄り難いっていうか」
「神々しいんだよね。祭壇置きたくなるよねー」
「いや、それ完全に神扱いじゃねーか」
好き勝手言う部員の声に呆れつつ、言いたい事も分かる。
絵に向かう時の天月さんは、全く異なる雰囲気があった。
そして僕は、その雰囲気ごと天月さんを描きたかった。
「天月さんも見てみなよ」
ふと、誰かがそう言った。
少し離れたところで、自分の制作をしていた天月さんが、ようやくこちらを見る。
「見上くんの絵、すごいよ」
そう言って女子部員が手招きすると、天月さんは一瞬迷った様子を浮かべたけれど、やがて腰を上げてこっちへ歩いてくる。
僕はなんとなく筆を置いた。
天月さんは僕の隣まで来ると、なにも言わずにキャンバスを見た。
「・・・・・・・・・・・・」
視線がゆっくりと画面の中を動いている。
その視線に、僕は固唾を飲み、見守っていた。
「・・・・・・どう?」
しばらくの沈黙の末、僕は耐えかねてそう問い掛けていた。
すると天月さんは少しだけ間を置いてから、
「いいね」
と、一言だけ溢した。
それ以上の言葉が続きそうになかったので、僕は思わず催促してしまった。
「そ、それだけ?」
「でも、まだ途中でしょ?」
「そうだけど・・・・・・」
てっきり、もう少し労ってくれるのかと思っていたけれど、淡い期待だった。
いや、天月さんに喜んでもらう為に描いている訳ではないのだけど、モチーフが天月さんだけに、張本人からの淡泊なリアクションは拍子抜けというか、肩透かしだった。
けれど、天月さんは僕に向き直ると、一言だけ訊ねた。
「私って、こんなにちゃんとしてる?」
「え?」
「なんでもない」
それだけ言って、天月さんは自分のイーゼルへと戻っていった。
周りの部員たちも彼女の様子に釈然としない様子だったけれど、誰かが、
「自分の絵見せられてリアクションに困ったんだろ」
と言って、一同はひとまずそれで納得する。
そうなんだろうか。
まぁ確かに、自分の絵を見せられて「綺麗だね」とか自画自賛と受け取られかねないし。
でも、天月さんの絵を見せるのはこれで初めてという訳ではないのだけど。
部員たちが去って行く中、僕は天月さんの背中を見つめていた。
――私って、こんなにちゃんとしてる?
その言葉が僅かに引っ掛かる。
でも、今はそれを追求する気にはなれない。まだ作品は完成した訳じゃない。
僕は再び、キャンバスに向き直り、作業へと戻った。
§
それから数日後、午後から描き続けていたせいか、美術部の空気に少し疲れが混じり始めていた。
僕は顔周りの色を調整しながら、何度目か分からない視線を天月さんに向ける。
天月さんは自分のキャンバスの前で、ジッと同じ場所を睨めっこしていた。
しばらく考え込んでいたけれど、不意に緊張が切れたように肩を落とす。
すると、大きく口を開いた。
「ふぁぁ・・・・・・:」
と、欠伸をしながら目元を擦る。
その拍子に、髪が頬に落ちてきて、天月さんは鬱陶しそうに手で払った。
と、その時だった。
「天月さん」
「なに?」
「頬に絵の具ついてるよ」
僕は自分の頬を指差すと天月さんも同じ辺りを手の甲で拭った。
「どこ?」
「ここ」
「取れた?」
「うん、取れてない」
「なんで、最初にうんって言うの?」
「ごめん、紛らわしかった」
不機嫌そうに言う天月さんがおかしくて僕はつい笑みを浮かべると、彼女は仏頂面で睨んでくる。
ふと、そんな表情を見ながら僕はある既視感を覚える。
なんて事はない、今の作品を描く前、天月さんの珍しい表情を見つけてはスケッチブックに描いていた事を思い出しただけだ。
やがて天月さんはもう気にするのをやめたらしく、キャンバスに向き直った。
僕も自分の絵に戻ると、そこにはキャンバスに向かう天月さんの真剣な眼差しと静謐な雰囲気が漂っていた。
背筋を伸ばし、長い髪を肩へ流して真剣な横顔で自分の作品に筆を伸ばしている姿がそこにはある。
『私って、こんなにちゃんとしてる?』
数日前に言われた言葉が、不意に蘇る。
「・・・・・・・・・・・・」
僕はもう一度、実物を見る。
すると天月さんはまだ絵の具の付いていた頬を少し気にして、指先で何度か擦りながら自分のキャンバスを見つめている。
でもやがて、なにか思いついたように、パレットに筆を伸ばした。
表情から余計な力が抜け、その目が真っ直ぐキャンバスに向いた。
その変化を逃さないよう、筆先にごく薄く色を含ませ、キャンバスの目元にそっと置いた。
まぶたの落ちくぼんでいた影を僅かに払い、瞳の奥に僅かに光を灯す。
そこには迷いが消えて、透き通った視線を放つ瞳があった。
一度引きでキャンバスを見てみると、すごく画面に馴染んでいる感じがした。
「・・・・・・よし」
僕は思わず頷いて、また天月さんに向き直る。
その日に限らず、天月さんは何度も表情を変える。
上手くいかない時は眉を寄せ、眠い時には半分目を閉じたまま筆を洗っている時もあるし、髪が邪魔になれば雑にまとめるし、長時間座っていれば背中だって丸くなる。
僕はその全部を見ていた。
それでも、筆が動くのは、キャンバスの中にある天月さんと目の前の天月さんが重なる時だ。
キャンバス上の幹となる部分は決して動かさず、時折見せる天月さんのさり気ない仕草が気に入れば枝を増やしていく。
九月も半ばを過ぎる頃には、人物の細部はもうかなり詰まっていた。
髪にも細かな色の変化が入り、筆を握る手には指先の力まで見えるようになった。
キャンバスを引きで見てみると、それぞれの形や色が少しずつ完成に向かって一つの方向に近付いているのが見えた。
完成図が、見え始めた。
§
それからの時間は驚くほど早く過ぎていった。
九月が終わり十月に入る。
新しくなにかを描き足すというより、そこから先は既にあるものを一枚の中に馴染ませていく時間の方が長かった。
僕はキャンバスを引きで見ては近付いて見るを繰り返し、違和感のあるところを見つけ出しては修正を加える。
そうして少しずつ、全体のバランスを見ながら僅かな引っかかりを一つひとつ潰していく。
そして、十月も終わりに近付いた頃、僕はいつものようにキャンバスから数歩離れて、見てみる。
画面の中では天月さんが自分のキャンバスに向かっている。
一枚の絵をゆっくり視線を移動させて確認してみる。
何度見ても途中で引っ掛かるものはない。
自分でも納得はいってる、妥協したという感覚もない。
何ヶ月も前から天月さんを見続けて、描き続けた。その集大成がここにある。
一枚の絵の中に収まっている。
僕の中にある天月さんとその技術が丸々このキャンバスに移動しているような、そんな感覚だった。
やがて僕は、筆を置いた。
「――出来た」
声に出した瞬間、実感が湧いた。
「遂に完成?」
「俯見先生」
すると、たまたま通りかかった俯見先生がやって来て、キャンバスを眺める。
「完成です。多分」
「多分なんだ」
「まだ描こうと思ったら描けると思いますけど、でもこれがベストだと思います」
「それを完成って言うんじゃないの?」
「絵に完成はないですから」
「一丁前な事言うねぇ」
俯見先生は少しだけからかうと、改めて僕の絵に向き直る。
かと思いきや、
「あっ」
とわざとらしく声を漏らした。
「てゆうか、先に見たのが私じゃマズかったよね? 天月さんに先に見せたかったよね?」
「いえ、そんな事もないですけど」
「含みがあるけど」
「確かに、最初は天月さんの方がよかったかもしれません」
「だよねー」
でも別に、絶対先に見せたかったという訳でもない。ちゃんと作品を見てもらえれば。
僕が気を取り直していると、俯見先生は、
「いいと思う」
それだけ言うと、微笑を浮かべて僕を湛えてくれた。
僕は礼をしてから、少し離れたところで自分の制作をしている天月さんの方へと視線を向けた。
僕はどこか晴れやかな気持ちで、彼女の方へと歩み寄る。
「天月さん」
「なに?」
「作品、出来たよ」
振り返る彼女に、僕は言った。
すると天月さんはピクリとその言葉に反応する。
「間に合ったんだね」
「うん、それで。よかったら、見て欲しいんだけど」
僕は緊張しながら天月さんの様子を窺うと、彼女は表情は動かさないまま、ゆっくりと席を立った。
僕は自分のイーゼルへと向かい、天月さんに正面に立ってもらう。
前にも制作途中の絵は見てもらったし、たぶんそれ以外にも目は入ってる筈だけれど、完成した一枚として見るのはこれが初めてだ。
一体どんな反応を示すのか、僕は固唾を吞んで見守った。
天月さんはキャンバスの前で足を止めると、ジッと画面に視線を落とした。
「・・・・・・・・・・・・」
なにも言わずしばらくの間、キャンバスを見つめる視線だけが画面の中を動いていく。
僕は隣でその様子を見ながら、緊張していた。
俯見先生や部員から感想を貰う時とはまるで違う。
絵のモチーフである天月さん自身がどう見るのか。
僕は彼女の第一声に、耳を傾け、全意識を集中させた。
しばらくして、天月さんが小さく息を吐いた。
「すごいね」
「本当?」
「うん。すごく綺麗」
その言葉に、僕は胸が少しだけ軽くなった。
けれどホッとしたのも束の間だった。
僕は気になって天月さんの表情を見る。
すると彼女は無表情だった。でもそれはいつもの事だ。
でも、いつも見ているから分かる。
無表情の中にも表情がある。
その時の天月さんの顔はどこか、浮かない。なにか含みがあるのを感じた。
そしてその推測を裏付けるように、天月さんは「でも」と言葉を続けた。
「やっぱり、ちゃんとしてるね」
「前にも言ってたね」
――私って、こんなにちゃんとしてる?
制作途中の絵を見てもらった時に、天月さんが言った言葉を思い出す。
あの時も、その言い回しが引っ掛かった。
それだけじゃなく、やけに言葉少なだった事も。なにか含みのある感じがして、胸に引っ掛かるものがあった。
すると天月さんは、おもむろにキャンバスの中にいる自分を指差した。
「この私、なんかずっと絵上手そうだよね」
「天月さんもそうでしょ?」
「そういう意味じゃなくて」
淡々とした口調で天月さんは言う。
彼女の中では答えがあるのに、それを言葉にしてくれないから、僕は、
「じゃあ、どういう意味?」
そんな風に掘り出さなくてはならない。
でも、イライラしている訳ではない。
ただ、もどかしい。
僕は天月さんの事をずっと見てきたけれど、分からない事も沢山あるし、思い通りにいかない事も沢山ある。
でもそれをコントロール出来ない事も分かってる。
なのに、胸につかえた違和感が、僕を急かす。
「私、絵描いてる時だって、ずっとこんな綺麗じゃないよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「悩んでる時は変な顔になるし、疲れたら猫背にもなる。眠たかったら欠伸もする。この前は、顔に絵の具付いてた」
「それは見た」
「うん」
天月さんはキャンバスを見ながら、そこでようやく僕を見る。
「見上くん、そういうのも全部見てたよね?」
言われて、すぐに思い浮かぶ。
眉間に皺を寄せながらキャンバスを見つめる天月さん。
大きな欠伸をして、目に涙を溜める天月さん。
頬に絵の具を付けて、それを拭う天月さん。
それだけじゃない、スケッチブックに描いていた時はもっと色んな天月さんを見てきた。
「・・・・・・でも、この絵にはそういうのが全然ないよね」
「でもこれも、天月さんだよ。間違いなく。ちゃんと君を見て描いた」
「うん、それは分かってる。別に、間違ってるって言ってる訳じゃないから」
「・・・・・・・・・・・・」
じゃあ、なんでそんなに浮かないの?
「これも私だと思うよ。こういう顔して描いてる時もあると思う」
天月さんは完成した絵を見ながら言う。
決して僕の絵を否定している訳じゃない。
なのに、その声は含みがある。
「見上くんが前に描いてたスケッチあるよね?」
「ん? うん」
少し話が逸れるも、僕は頷く。
「授業中に私が寝てる時とか、寝癖付いてるのとか、変な顔ばっか描いてたよね」
「そればっかりじゃないけど」
「そればっかりだったよ」
振り返り様に睨まれた。
僕は気圧されつつ、その軽妙なやりとりに安堵もしていた。
いつもの天月さんと話してるみたいで。
でも、僕がホッとしてるのも束の間、またすぐに天月さんの顔つきに影が落ちる。
「でも、あっちの方が私っぽかった」
「・・・・・・・・・・・・」
一瞬、意味が分からなかった。
スケッチもキャンバスの絵も、僕にとっては同じ天月さんだ。
決して曲解して描いた訳じゃない。
実物をちゃんと見て描いた。そこは誠実だったと思う。
さらに言えば、キャンバスに描いた天月さんの方が、遙かにつぶさに観察して描いた。
スケッチの時は数分どころか数十秒で描き殴ったものもある。
形も粗いし、色もない。
なのに――。
「でも、だからこの絵がダメって言ってる訳じゃないよ?」
「うん・・・・・・」
「すごくよく描けてると思う。見上くんらしさも出てる」
「僕らしさ?」
「構図とか。指先に力が入ってるのもちゃんと見えるし、主役を引き立てるのも上手い。一つの作品としてすごく綺麗だと思う」
「・・・・・・・・・・・・」
そう言ってもらえるだけの準備と努力はして望んだつもりだ。
この作品を描き上げるのに、何度も天月さんを見て、描いてを繰り返してきたから。
でも、褒められているのにずっと浮かない表情の天月さんを見て、素直に喜べなかった。
「でも、ここに描いてる私は、綺麗過ぎると思った」
「それは、美化してるって事?」
「ううん、そういうのとも違う」
「・・・・・・違う?」
「だって、ここに描いてる私も、本当だと思うから。でも、こういう私ばっかり残ってる」
「・・・・・・・・・・・・」
「別に、綺麗に描かれるのが嫌な訳じゃない。でも、見上くんはもっと色んな私を見てたよね? 変なところまで一杯見つけて」
「・・・・・・・・・・・・」
「なのにここでは、それが一つもないなって」
天月さんの言葉が重い。
決して否定されている訳じゃないのに、なのに否定される以上に痛いところを突かれたみたいだった。
「ごめん、せっかく描いてくれたのに、こんな事言って」
「いや・・・・・・」
「本当に、絵は好きだよ」
“絵”は。
そこだけが僕の耳に強調されて聞こえてきた。
やがて天月さんは自身のイーゼルに戻っていく。
僕は呼び止める事も出来ずにその場に立ち尽くした。
目の前には、何ヶ月も掛けて完成させた一枚がある。
僕が今まで描いた中で間違いなく一番上手く描けた。
形も、色も、構図も、自分が納得するところまで詰めた。一切の妥協はない。
描かれている天月さんだって、僕が実際に見て描いたもので、嘘なんて一つもない。
誠実だった筈だ。
なのに天月さんは、目の前の絵より、あの雑なスケッチの方が自分らしいと言った。
なんで――。
僕は目の前にあるキャンバスを見つめる。
でも答えは見つからなかった。
絵を描き始めてから数日が経つ頃には、天月さんにも少しずつ細かな形が入り始めた。
大きな色だけだった顔には目鼻立ちが現れ、筆を持つ手にも指の一本一本が見えるようになっている。
今日は顔を中心に描き進めていた。
少し離れたところでは、天月さんも自分のキャンバスに向かっている。僕はその横顔を見つめる。
一週間描き続けた形だから、以前ほど手が止まらない。
天月さんが少しだけ眉を寄せたのが目に映る。
自分の絵になにか気になるところがあるらしく、そのまま腕を組んで画面を睨んでいる。
「・・・・・・・・・・・・」
僕は筆を持ったまま待った。
今描いている目元とは少し違う。
しばらくすると、天月さんは腕組みを解く。考えが纏まったのか、さっきまで寄っていた眉から力が抜けていた。
再びキャンバスに向かう彼女を見て、僕もまた筆を動かした。
天月さんが動けば、僕の手も止まる。また近い角度に戻ればそこで続きを描く。
そうやって繰り返し見える形を追って、少しずつ整えていく。
顔を描き進めた後は、筆を持つ手へと視線を移した。
細い指が筆の軸を挟み、手首は僅かに内側に返っている。キャンバスに色を置く時だけ少し力が入り、筆を離すとまた緩む。
僕はその動きを何度か確認して見てから、自分のキャンバスに向き直り、筆を入れていく。
指先が少し太く、手首の返り方も浅かったので、指先を少し細くし、手首の角度も僅かに直す。
すると腕から筆先までの流れが自然に繋がった。
手先を描いた後は、髪に移る。
天月さんの栗色の髪。
彼女が俯くと、前へ流れた髪が頬の脇に落ちる。
その形を見てから自分の絵に戻ると、今描いている髪は肩を覆い過ぎていて、首から腕へ続く形が少し重く見える。
僕は肩に落ちる髪を僅かに減らした。
すると上半身の重さが抜けて、右へ伸びる腕との釣り合いがよくなった。
そうやって何度も天月さんとキャンバスを往復しながら、一つずつ形を整え、色を重ねていく。
昼を過ぎた頃には天月さんの輪郭がずっと明確になっていた。
横顔も、手も、髪も、それぞれにちゃんと見覚えがある。
僕は手応えを感じながら、キャンバスに前のめりになる。
§
それからも制作は少しずつ進んでいき、そうして描いていくうち、画面の中の天月さんは少しずつ纏まりを見せていく。
気付けば八月も終わり、九月に入っていた。
キャンバスには遠目からでも天月さんだと分かる姿が出来上がっていた。
「これ、かなり出来てきたね」
ふと背後から俯見先生の声が聞こえた。
振り返ると、俯見先生は僕の肩越しに三十号のキャンバスを眺めていた。
「絵を描いてる時の天月さんって、こんな感じするよね」
それには僕も頷く。
天月さんは、普段は抜けてるところもあるけれど、いざキャンバスの前に立つと雰囲気が変わる。
なんというか、静謐とした空気を漂わせるのだ。
「周りに人がいるのに、一人だけ別のところにいるみたいなね」
「ですね」
するとそこへ、「なんの話ですかー?」と近くにいた女子部員が反応してこっちに来た。
「お、見上くんの絵、だいぶ進んでるじゃん!」
するとその声を聞いて、他の部員も歩み寄ってくる。
「うわ、見上すげぇ。天月そっくり」
「これが見上の本気か」
「大袈裟な」
「確かに、絵描いてる時の天月ってこんな雰囲気あるよな」
「分かるー。なんか、近寄り難いっていうか」
「神々しいんだよね。祭壇置きたくなるよねー」
「いや、それ完全に神扱いじゃねーか」
好き勝手言う部員の声に呆れつつ、言いたい事も分かる。
絵に向かう時の天月さんは、全く異なる雰囲気があった。
そして僕は、その雰囲気ごと天月さんを描きたかった。
「天月さんも見てみなよ」
ふと、誰かがそう言った。
少し離れたところで、自分の制作をしていた天月さんが、ようやくこちらを見る。
「見上くんの絵、すごいよ」
そう言って女子部員が手招きすると、天月さんは一瞬迷った様子を浮かべたけれど、やがて腰を上げてこっちへ歩いてくる。
僕はなんとなく筆を置いた。
天月さんは僕の隣まで来ると、なにも言わずにキャンバスを見た。
「・・・・・・・・・・・・」
視線がゆっくりと画面の中を動いている。
その視線に、僕は固唾を飲み、見守っていた。
「・・・・・・どう?」
しばらくの沈黙の末、僕は耐えかねてそう問い掛けていた。
すると天月さんは少しだけ間を置いてから、
「いいね」
と、一言だけ溢した。
それ以上の言葉が続きそうになかったので、僕は思わず催促してしまった。
「そ、それだけ?」
「でも、まだ途中でしょ?」
「そうだけど・・・・・・」
てっきり、もう少し労ってくれるのかと思っていたけれど、淡い期待だった。
いや、天月さんに喜んでもらう為に描いている訳ではないのだけど、モチーフが天月さんだけに、張本人からの淡泊なリアクションは拍子抜けというか、肩透かしだった。
けれど、天月さんは僕に向き直ると、一言だけ訊ねた。
「私って、こんなにちゃんとしてる?」
「え?」
「なんでもない」
それだけ言って、天月さんは自分のイーゼルへと戻っていった。
周りの部員たちも彼女の様子に釈然としない様子だったけれど、誰かが、
「自分の絵見せられてリアクションに困ったんだろ」
と言って、一同はひとまずそれで納得する。
そうなんだろうか。
まぁ確かに、自分の絵を見せられて「綺麗だね」とか自画自賛と受け取られかねないし。
でも、天月さんの絵を見せるのはこれで初めてという訳ではないのだけど。
部員たちが去って行く中、僕は天月さんの背中を見つめていた。
――私って、こんなにちゃんとしてる?
その言葉が僅かに引っ掛かる。
でも、今はそれを追求する気にはなれない。まだ作品は完成した訳じゃない。
僕は再び、キャンバスに向き直り、作業へと戻った。
§
それから数日後、午後から描き続けていたせいか、美術部の空気に少し疲れが混じり始めていた。
僕は顔周りの色を調整しながら、何度目か分からない視線を天月さんに向ける。
天月さんは自分のキャンバスの前で、ジッと同じ場所を睨めっこしていた。
しばらく考え込んでいたけれど、不意に緊張が切れたように肩を落とす。
すると、大きく口を開いた。
「ふぁぁ・・・・・・:」
と、欠伸をしながら目元を擦る。
その拍子に、髪が頬に落ちてきて、天月さんは鬱陶しそうに手で払った。
と、その時だった。
「天月さん」
「なに?」
「頬に絵の具ついてるよ」
僕は自分の頬を指差すと天月さんも同じ辺りを手の甲で拭った。
「どこ?」
「ここ」
「取れた?」
「うん、取れてない」
「なんで、最初にうんって言うの?」
「ごめん、紛らわしかった」
不機嫌そうに言う天月さんがおかしくて僕はつい笑みを浮かべると、彼女は仏頂面で睨んでくる。
ふと、そんな表情を見ながら僕はある既視感を覚える。
なんて事はない、今の作品を描く前、天月さんの珍しい表情を見つけてはスケッチブックに描いていた事を思い出しただけだ。
やがて天月さんはもう気にするのをやめたらしく、キャンバスに向き直った。
僕も自分の絵に戻ると、そこにはキャンバスに向かう天月さんの真剣な眼差しと静謐な雰囲気が漂っていた。
背筋を伸ばし、長い髪を肩へ流して真剣な横顔で自分の作品に筆を伸ばしている姿がそこにはある。
『私って、こんなにちゃんとしてる?』
数日前に言われた言葉が、不意に蘇る。
「・・・・・・・・・・・・」
僕はもう一度、実物を見る。
すると天月さんはまだ絵の具の付いていた頬を少し気にして、指先で何度か擦りながら自分のキャンバスを見つめている。
でもやがて、なにか思いついたように、パレットに筆を伸ばした。
表情から余計な力が抜け、その目が真っ直ぐキャンバスに向いた。
その変化を逃さないよう、筆先にごく薄く色を含ませ、キャンバスの目元にそっと置いた。
まぶたの落ちくぼんでいた影を僅かに払い、瞳の奥に僅かに光を灯す。
そこには迷いが消えて、透き通った視線を放つ瞳があった。
一度引きでキャンバスを見てみると、すごく画面に馴染んでいる感じがした。
「・・・・・・よし」
僕は思わず頷いて、また天月さんに向き直る。
その日に限らず、天月さんは何度も表情を変える。
上手くいかない時は眉を寄せ、眠い時には半分目を閉じたまま筆を洗っている時もあるし、髪が邪魔になれば雑にまとめるし、長時間座っていれば背中だって丸くなる。
僕はその全部を見ていた。
それでも、筆が動くのは、キャンバスの中にある天月さんと目の前の天月さんが重なる時だ。
キャンバス上の幹となる部分は決して動かさず、時折見せる天月さんのさり気ない仕草が気に入れば枝を増やしていく。
九月も半ばを過ぎる頃には、人物の細部はもうかなり詰まっていた。
髪にも細かな色の変化が入り、筆を握る手には指先の力まで見えるようになった。
キャンバスを引きで見てみると、それぞれの形や色が少しずつ完成に向かって一つの方向に近付いているのが見えた。
完成図が、見え始めた。
§
それからの時間は驚くほど早く過ぎていった。
九月が終わり十月に入る。
新しくなにかを描き足すというより、そこから先は既にあるものを一枚の中に馴染ませていく時間の方が長かった。
僕はキャンバスを引きで見ては近付いて見るを繰り返し、違和感のあるところを見つけ出しては修正を加える。
そうして少しずつ、全体のバランスを見ながら僅かな引っかかりを一つひとつ潰していく。
そして、十月も終わりに近付いた頃、僕はいつものようにキャンバスから数歩離れて、見てみる。
画面の中では天月さんが自分のキャンバスに向かっている。
一枚の絵をゆっくり視線を移動させて確認してみる。
何度見ても途中で引っ掛かるものはない。
自分でも納得はいってる、妥協したという感覚もない。
何ヶ月も前から天月さんを見続けて、描き続けた。その集大成がここにある。
一枚の絵の中に収まっている。
僕の中にある天月さんとその技術が丸々このキャンバスに移動しているような、そんな感覚だった。
やがて僕は、筆を置いた。
「――出来た」
声に出した瞬間、実感が湧いた。
「遂に完成?」
「俯見先生」
すると、たまたま通りかかった俯見先生がやって来て、キャンバスを眺める。
「完成です。多分」
「多分なんだ」
「まだ描こうと思ったら描けると思いますけど、でもこれがベストだと思います」
「それを完成って言うんじゃないの?」
「絵に完成はないですから」
「一丁前な事言うねぇ」
俯見先生は少しだけからかうと、改めて僕の絵に向き直る。
かと思いきや、
「あっ」
とわざとらしく声を漏らした。
「てゆうか、先に見たのが私じゃマズかったよね? 天月さんに先に見せたかったよね?」
「いえ、そんな事もないですけど」
「含みがあるけど」
「確かに、最初は天月さんの方がよかったかもしれません」
「だよねー」
でも別に、絶対先に見せたかったという訳でもない。ちゃんと作品を見てもらえれば。
僕が気を取り直していると、俯見先生は、
「いいと思う」
それだけ言うと、微笑を浮かべて僕を湛えてくれた。
僕は礼をしてから、少し離れたところで自分の制作をしている天月さんの方へと視線を向けた。
僕はどこか晴れやかな気持ちで、彼女の方へと歩み寄る。
「天月さん」
「なに?」
「作品、出来たよ」
振り返る彼女に、僕は言った。
すると天月さんはピクリとその言葉に反応する。
「間に合ったんだね」
「うん、それで。よかったら、見て欲しいんだけど」
僕は緊張しながら天月さんの様子を窺うと、彼女は表情は動かさないまま、ゆっくりと席を立った。
僕は自分のイーゼルへと向かい、天月さんに正面に立ってもらう。
前にも制作途中の絵は見てもらったし、たぶんそれ以外にも目は入ってる筈だけれど、完成した一枚として見るのはこれが初めてだ。
一体どんな反応を示すのか、僕は固唾を吞んで見守った。
天月さんはキャンバスの前で足を止めると、ジッと画面に視線を落とした。
「・・・・・・・・・・・・」
なにも言わずしばらくの間、キャンバスを見つめる視線だけが画面の中を動いていく。
僕は隣でその様子を見ながら、緊張していた。
俯見先生や部員から感想を貰う時とはまるで違う。
絵のモチーフである天月さん自身がどう見るのか。
僕は彼女の第一声に、耳を傾け、全意識を集中させた。
しばらくして、天月さんが小さく息を吐いた。
「すごいね」
「本当?」
「うん。すごく綺麗」
その言葉に、僕は胸が少しだけ軽くなった。
けれどホッとしたのも束の間だった。
僕は気になって天月さんの表情を見る。
すると彼女は無表情だった。でもそれはいつもの事だ。
でも、いつも見ているから分かる。
無表情の中にも表情がある。
その時の天月さんの顔はどこか、浮かない。なにか含みがあるのを感じた。
そしてその推測を裏付けるように、天月さんは「でも」と言葉を続けた。
「やっぱり、ちゃんとしてるね」
「前にも言ってたね」
――私って、こんなにちゃんとしてる?
制作途中の絵を見てもらった時に、天月さんが言った言葉を思い出す。
あの時も、その言い回しが引っ掛かった。
それだけじゃなく、やけに言葉少なだった事も。なにか含みのある感じがして、胸に引っ掛かるものがあった。
すると天月さんは、おもむろにキャンバスの中にいる自分を指差した。
「この私、なんかずっと絵上手そうだよね」
「天月さんもそうでしょ?」
「そういう意味じゃなくて」
淡々とした口調で天月さんは言う。
彼女の中では答えがあるのに、それを言葉にしてくれないから、僕は、
「じゃあ、どういう意味?」
そんな風に掘り出さなくてはならない。
でも、イライラしている訳ではない。
ただ、もどかしい。
僕は天月さんの事をずっと見てきたけれど、分からない事も沢山あるし、思い通りにいかない事も沢山ある。
でもそれをコントロール出来ない事も分かってる。
なのに、胸につかえた違和感が、僕を急かす。
「私、絵描いてる時だって、ずっとこんな綺麗じゃないよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「悩んでる時は変な顔になるし、疲れたら猫背にもなる。眠たかったら欠伸もする。この前は、顔に絵の具付いてた」
「それは見た」
「うん」
天月さんはキャンバスを見ながら、そこでようやく僕を見る。
「見上くん、そういうのも全部見てたよね?」
言われて、すぐに思い浮かぶ。
眉間に皺を寄せながらキャンバスを見つめる天月さん。
大きな欠伸をして、目に涙を溜める天月さん。
頬に絵の具を付けて、それを拭う天月さん。
それだけじゃない、スケッチブックに描いていた時はもっと色んな天月さんを見てきた。
「・・・・・・でも、この絵にはそういうのが全然ないよね」
「でもこれも、天月さんだよ。間違いなく。ちゃんと君を見て描いた」
「うん、それは分かってる。別に、間違ってるって言ってる訳じゃないから」
「・・・・・・・・・・・・」
じゃあ、なんでそんなに浮かないの?
「これも私だと思うよ。こういう顔して描いてる時もあると思う」
天月さんは完成した絵を見ながら言う。
決して僕の絵を否定している訳じゃない。
なのに、その声は含みがある。
「見上くんが前に描いてたスケッチあるよね?」
「ん? うん」
少し話が逸れるも、僕は頷く。
「授業中に私が寝てる時とか、寝癖付いてるのとか、変な顔ばっか描いてたよね」
「そればっかりじゃないけど」
「そればっかりだったよ」
振り返り様に睨まれた。
僕は気圧されつつ、その軽妙なやりとりに安堵もしていた。
いつもの天月さんと話してるみたいで。
でも、僕がホッとしてるのも束の間、またすぐに天月さんの顔つきに影が落ちる。
「でも、あっちの方が私っぽかった」
「・・・・・・・・・・・・」
一瞬、意味が分からなかった。
スケッチもキャンバスの絵も、僕にとっては同じ天月さんだ。
決して曲解して描いた訳じゃない。
実物をちゃんと見て描いた。そこは誠実だったと思う。
さらに言えば、キャンバスに描いた天月さんの方が、遙かにつぶさに観察して描いた。
スケッチの時は数分どころか数十秒で描き殴ったものもある。
形も粗いし、色もない。
なのに――。
「でも、だからこの絵がダメって言ってる訳じゃないよ?」
「うん・・・・・・」
「すごくよく描けてると思う。見上くんらしさも出てる」
「僕らしさ?」
「構図とか。指先に力が入ってるのもちゃんと見えるし、主役を引き立てるのも上手い。一つの作品としてすごく綺麗だと思う」
「・・・・・・・・・・・・」
そう言ってもらえるだけの準備と努力はして望んだつもりだ。
この作品を描き上げるのに、何度も天月さんを見て、描いてを繰り返してきたから。
でも、褒められているのにずっと浮かない表情の天月さんを見て、素直に喜べなかった。
「でも、ここに描いてる私は、綺麗過ぎると思った」
「それは、美化してるって事?」
「ううん、そういうのとも違う」
「・・・・・・違う?」
「だって、ここに描いてる私も、本当だと思うから。でも、こういう私ばっかり残ってる」
「・・・・・・・・・・・・」
「別に、綺麗に描かれるのが嫌な訳じゃない。でも、見上くんはもっと色んな私を見てたよね? 変なところまで一杯見つけて」
「・・・・・・・・・・・・」
「なのにここでは、それが一つもないなって」
天月さんの言葉が重い。
決して否定されている訳じゃないのに、なのに否定される以上に痛いところを突かれたみたいだった。
「ごめん、せっかく描いてくれたのに、こんな事言って」
「いや・・・・・・」
「本当に、絵は好きだよ」
“絵”は。
そこだけが僕の耳に強調されて聞こえてきた。
やがて天月さんは自身のイーゼルに戻っていく。
僕は呼び止める事も出来ずにその場に立ち尽くした。
目の前には、何ヶ月も掛けて完成させた一枚がある。
僕が今まで描いた中で間違いなく一番上手く描けた。
形も、色も、構図も、自分が納得するところまで詰めた。一切の妥協はない。
描かれている天月さんだって、僕が実際に見て描いたもので、嘘なんて一つもない。
誠実だった筈だ。
なのに天月さんは、目の前の絵より、あの雑なスケッチの方が自分らしいと言った。
なんで――。
僕は目の前にあるキャンバスを見つめる。
でも答えは見つからなかった。
