未回答の終点

「特別感があって嬉しいとは感じるけど……でもやっぱり違いがわかんないや」
「……そう」

わかっていたけど。心の中で期待してしまっていた。

私はポケットから一粒の飴を取り出した。レモン味の飴。私の一番好きなやつ。
それに長谷川くんは興味深そうに私の手元を凝視した。

「美緒ってそれ好きなの?」
「ああ、うん。これが甘さと酸っぱさのバランスが一番ちょうどいいんだよね」
「そうなんだ」
「良かったら一つ食べる?」
「いいの? ありがと」

長谷川くんが飴を受け取った後少し黙り、おもむろに口を開いた。

「俺、昨日恋人っぽいことって何があるかなって考えたんだけどさ」
「うん」
「手、繋いでもいい?」
「……は?」

聞き間違い?聞き間違いであってほしい。だって、手を繋ぐって。

「もちろん美緒が嫌ならやらない。恋愛感情のヒントになるかと思って」
「……いいよ」

これも夢見ていたことだ。手を繋いで微笑み合う。傍から見れば本当に付き合っているように見えるだろう。

「ありがとう、じゃあ」

長谷川くんがそっと手を差し出した。
やっぱり男の子の手だ。大きくて骨ばっていて、すらりとしていて。手すら少女漫画のヒーローみたい。

「う、うん」

緊張する。好きな人と手を繋ぐのってこんなに緊張するの?
震えを必死に抑えながら手を重ねた。
ぎゅっ。

「あ……」

今の一瞬で、「幸せ」で心が満たされた。
期間限定とはいえ好きな人と手を繋いで帰っている。これが幸せじゃないはずがない。

「なるほど、手を繋ぐってこんな感じなんだ」

一人で真面目に考えている横で、私は顔が急激に熱くなっていくのを感じていた。
鼓動が速い。ドキドキして心臓が壊れてしまいそう。
それでも長谷川くんは特に感情の変化はない。
片思いってこんなに苦しかったっけ。一方通行の想いってこんなに凶器みたいなものだったっけ。

「せっかくだし、昨日のところまでこのままでいてもいい?」
「……うん」

優しく握られながら無言で歩き続ける。
好きだよ。気づいてよ。一方通行だって知ってよ。
ふいに泣きそうになって、涙を必死にこらえる。ここで泣いちゃダメだ。あと一日。あと一日付き合えばまた前と同じに戻れるんだ。

私の代わりに木が泣いている。涙のように葉がはらはらと落ちていた。
きゅうっとなる胸を押さえて、丁字路に到着する。
ふっと繋いでいた手が離れる。急に手のひらの通気性がよくなった。

「あ……」
「じゃあ、また明日ね。明日は最終日だね」
「うん。わかってる。またね」

その場を離れる。長谷川くんが見えなくなるくらいまで。
手に温もりが残っている。夢じゃなかった。本当に私たちは手を繋いでいたんだ。
幸せと辛さが綯(な)|い交ぜになっていた。