「にしむ……美緒はどっち?」
住宅街を抜けた辺りで、丁字路が見えてきた。
「俺は左」
「私は右」
私が指差すと、長谷川くんが私とは反対方向を指した。
一瞬の沈黙の後、長谷川くんがゆっくりと私と顔を見合わせた。
「じゃあ、今日はここで解散?」
「そう……だね」
「そっか……じゃあ」
再びしん、と沈黙が走る。
なんだか気まずくて、私は長谷川くんから一歩前に出た。
「えっと、長谷川くん、また明日ね」
「うん。またね」
長谷川くんがゆらゆらと手を振ってくれる。私も反射的に振り返した。
三度目の沈黙が走る前に、私はその場を離れた。
右に曲がって家路を急ぐ。振り返りそうになったけどなんとか留める。
丁字路の交点で、まだ長谷川くんが立っている気がするけど、振り返る勇気はなかった。
どれくらい経っただろう。いつの間にか早歩きになって小走りになって走っていた。
振り返っても長谷川くんの姿どころか交点すら見当たらない。
そこでようやく私は大きく息を吐き出した。
長谷川くんってやっぱり危ないかもしれない。私のこと好きじゃないのに、手を振ってくれるなんて思わせぶりにしか思えない。いや、恋人ごっこなんだから当然なのか?
「あーもう、わかんない」
長谷川くんは純粋に恋人っぽいことを実践してるだけ。それに過剰反応していちいち照れてるのは私。つまり全面的に私が悪い。長谷川くんのことを好きじゃない設定にしたのは自分なのに、こんなんじゃいつかバレそう。というかバレるに決まってる。
「こんな調子で三日間なんて無理かも……」
独り言を呟きながら、家に到着する。
「美緒? おかえりー」
お母さんの呑気な声があまりにもいつも通りすぎて、一瞬今日の出来事は私の妄想だったんじゃないかと錯覚した。
「あーうん。ただいまー」
私もいつも通りに返事をして、自室へ向かう。カバンを置いて、ベッドになだれ込む。また大きくため息をついた。
いつもと同じインテリア、いつもと同じ配置。違うのは放課後の時間だけ。
「私、このままで大丈夫かなぁ……」
このまま恋人ごっこを続けたら、私は本当に「ごっこ」じゃ満足できなくなる。本当の恋人になりたくなる。でもそれを長谷川くんは望んでいないんだろう。今は恋愛感情がわからないし、今後わかってもきっとその隣にいるのは私じゃない。
ただの実験道具。ただの期間限定の恋人。それだけだってわかってるのに。
「やっぱりオッケーするんじゃなかった……」
こんなに苦しいだけなら、片思いより辛い。遠くから見てるだけのほうが楽だった。
住宅街を抜けた辺りで、丁字路が見えてきた。
「俺は左」
「私は右」
私が指差すと、長谷川くんが私とは反対方向を指した。
一瞬の沈黙の後、長谷川くんがゆっくりと私と顔を見合わせた。
「じゃあ、今日はここで解散?」
「そう……だね」
「そっか……じゃあ」
再びしん、と沈黙が走る。
なんだか気まずくて、私は長谷川くんから一歩前に出た。
「えっと、長谷川くん、また明日ね」
「うん。またね」
長谷川くんがゆらゆらと手を振ってくれる。私も反射的に振り返した。
三度目の沈黙が走る前に、私はその場を離れた。
右に曲がって家路を急ぐ。振り返りそうになったけどなんとか留める。
丁字路の交点で、まだ長谷川くんが立っている気がするけど、振り返る勇気はなかった。
どれくらい経っただろう。いつの間にか早歩きになって小走りになって走っていた。
振り返っても長谷川くんの姿どころか交点すら見当たらない。
そこでようやく私は大きく息を吐き出した。
長谷川くんってやっぱり危ないかもしれない。私のこと好きじゃないのに、手を振ってくれるなんて思わせぶりにしか思えない。いや、恋人ごっこなんだから当然なのか?
「あーもう、わかんない」
長谷川くんは純粋に恋人っぽいことを実践してるだけ。それに過剰反応していちいち照れてるのは私。つまり全面的に私が悪い。長谷川くんのことを好きじゃない設定にしたのは自分なのに、こんなんじゃいつかバレそう。というかバレるに決まってる。
「こんな調子で三日間なんて無理かも……」
独り言を呟きながら、家に到着する。
「美緒? おかえりー」
お母さんの呑気な声があまりにもいつも通りすぎて、一瞬今日の出来事は私の妄想だったんじゃないかと錯覚した。
「あーうん。ただいまー」
私もいつも通りに返事をして、自室へ向かう。カバンを置いて、ベッドになだれ込む。また大きくため息をついた。
いつもと同じインテリア、いつもと同じ配置。違うのは放課後の時間だけ。
「私、このままで大丈夫かなぁ……」
このまま恋人ごっこを続けたら、私は本当に「ごっこ」じゃ満足できなくなる。本当の恋人になりたくなる。でもそれを長谷川くんは望んでいないんだろう。今は恋愛感情がわからないし、今後わかってもきっとその隣にいるのは私じゃない。
ただの実験道具。ただの期間限定の恋人。それだけだってわかってるのに。
「やっぱりオッケーするんじゃなかった……」
こんなに苦しいだけなら、片思いより辛い。遠くから見てるだけのほうが楽だった。
