「西村は恋愛感情ってなんだと思う?」
他愛のない話で盛り上がっていた最中、長谷川くんが唐突にそう尋ねた。
「俺にはわからないからさ、とりあえず西村の意見が聞きたい」
「私に聞かれても……」
しばらく思案した後、探り探り口を開いた。
「特定の人に特別扱いされたいとか独占したいとか思う気持ちのこと……?」
「そっかー。やっぱり俺にはわかんない。友達の一番でいたいって気持ちとどう違うと思う?」
「だから私に言われても。……恋愛なんて全然してこなかったし……」
語尾が尻すぼみになっていく。
「恋愛感情って難しいね」
「……そうだね」
好きな人は好きな気持ちがわからない。それどころか目の前の人の気持ちにすら気づいていない。
私、このまま恋人ごっこをしてていいのかな。ただ私が苦しくなるだけな気がする。
ふと顔を上げた。どこまで行っても同じような景色が広がっている。コンクリートで固められた道があって、家があって、時々植物が見えて。数えきれないほど通ってきた道なのに、どこか違って見える。それも長谷川くんと一緒に帰っている効果なのかな。ほぼ無言だけど。
ちなみに気まずくて話さないのではない。長谷川くんは歩きながら、恋愛感情について真剣に考えている。私はただ隣を歩いているだけ。
――これ、私いる?
私がいてもいなくてもいいんじゃないの?
こっそりとため息をついたその時。
「……美緒」
一瞬周りの音が完全に聞こえなくなった。
初めて普通の自分の名前がとびきり可愛く聞こえた。
「え、ちょ、今名前……」
美緒。長谷川くんの肉声で私の下の名前を呼んでくれた。
私が混乱しているのに対して長谷川くんは何の気なしにこちらを見た。
「あ、ごめん。下の名前で呼ぶのって恋人っぽいかと思って。どう?」
「どうって……」
「恋人っぽい?」
無自覚なところが罪だ。
私はなんとか平静を保ちながら答えた。
「こ、恋人っぽいんじゃない?」
「そっか。じゃあ二人でいる時は美緒って呼んでいい?」
「え」
「そのほうが恋人っぽいかなぁって」
「そ、そっか」
一回呼ばれただけでこんなに動揺するのに、毎日のように美緒って呼ばれるってこと?
いや、ここで断るのもおかしいかな。
「い、いいよ」
「ほんと?ありがと」
長谷川くんがにこっと微笑む。
その笑顔が眩しくて綺麗で目が離せない。
無自覚な笑顔も、無意識に人の心を揺さぶる言葉も、私は大好きだ。
最終的に自分から手放すことを決めてるのに、私以外に見せるのがどうしようもなく嫌だ。
他愛のない話で盛り上がっていた最中、長谷川くんが唐突にそう尋ねた。
「俺にはわからないからさ、とりあえず西村の意見が聞きたい」
「私に聞かれても……」
しばらく思案した後、探り探り口を開いた。
「特定の人に特別扱いされたいとか独占したいとか思う気持ちのこと……?」
「そっかー。やっぱり俺にはわかんない。友達の一番でいたいって気持ちとどう違うと思う?」
「だから私に言われても。……恋愛なんて全然してこなかったし……」
語尾が尻すぼみになっていく。
「恋愛感情って難しいね」
「……そうだね」
好きな人は好きな気持ちがわからない。それどころか目の前の人の気持ちにすら気づいていない。
私、このまま恋人ごっこをしてていいのかな。ただ私が苦しくなるだけな気がする。
ふと顔を上げた。どこまで行っても同じような景色が広がっている。コンクリートで固められた道があって、家があって、時々植物が見えて。数えきれないほど通ってきた道なのに、どこか違って見える。それも長谷川くんと一緒に帰っている効果なのかな。ほぼ無言だけど。
ちなみに気まずくて話さないのではない。長谷川くんは歩きながら、恋愛感情について真剣に考えている。私はただ隣を歩いているだけ。
――これ、私いる?
私がいてもいなくてもいいんじゃないの?
こっそりとため息をついたその時。
「……美緒」
一瞬周りの音が完全に聞こえなくなった。
初めて普通の自分の名前がとびきり可愛く聞こえた。
「え、ちょ、今名前……」
美緒。長谷川くんの肉声で私の下の名前を呼んでくれた。
私が混乱しているのに対して長谷川くんは何の気なしにこちらを見た。
「あ、ごめん。下の名前で呼ぶのって恋人っぽいかと思って。どう?」
「どうって……」
「恋人っぽい?」
無自覚なところが罪だ。
私はなんとか平静を保ちながら答えた。
「こ、恋人っぽいんじゃない?」
「そっか。じゃあ二人でいる時は美緒って呼んでいい?」
「え」
「そのほうが恋人っぽいかなぁって」
「そ、そっか」
一回呼ばれただけでこんなに動揺するのに、毎日のように美緒って呼ばれるってこと?
いや、ここで断るのもおかしいかな。
「い、いいよ」
「ほんと?ありがと」
長谷川くんがにこっと微笑む。
その笑顔が眩しくて綺麗で目が離せない。
無自覚な笑顔も、無意識に人の心を揺さぶる言葉も、私は大好きだ。
最終的に自分から手放すことを決めてるのに、私以外に見せるのがどうしようもなく嫌だ。
