未回答の終点

「本当? ありがとう」

夕日にも負けない輝く笑顔。ほんの一時間前まで、それが眩しくて、見惚れてしまうくらい綺麗なものだったのに、今は私を期限付きの恋愛へ引きずり込んでいるようにしか見えない。

「じゃあ、ルールを決めようか」
「ルール?」
「うん。西村の都合のいいルールを決めていいよ」

長谷川くんは少し考えてから口を開いた。

「まず俺から提示する条件は二つ。三日間限定にすることと、西村がやめたいと思ったら中断すること。それ以外は、なんでも」
「じゃあ一つめ。周りには秘密にしてくれる?」
「それはいいけど……でも今まで関わりの少なかった人と急に仲良くなったらすぐバレるような気がする」
「そっか……じゃあ恋人っぽいことは校内ではしない。学校の中では今まで通りのクラスメイトとして接して。三日間が終わっても」
「ん、わかった。他は何かある?」
「あとは……」

三日後に正式に付き合いたい。
なんて言葉が口から出そうになって、慌てて飲み込む。もし言ってしまったら、私が長谷川くんを好きなことがバレる。そしたらきっとこの話は白紙になるだろう。
そんなのダメだ。せっかく好きな人と付き合うチャンスなんだから、絶対にバレないようにしないと。長谷川くんの思っているような「長谷川くんには興味のないクラスメイト」を押し通さないと。

「西村?」

長谷川くんの声が真上から聞こえた。見上げると長谷川くんは数歩近づいてきていて、今までで一番距離が近い。
どくん、と胸が大きく鳴った。必死に平静を装う。

「あ、ごめん。なに?」
「他にルール思いついた?」

こてん、と微かに首を傾げる行為がなんとも色っぽい。「かっこいい」「綺麗」がスタンダードなイメージとして定着しているけど、時折見せる何気ない仕草も魅力の一つだと思っている。
おとぎ話の王子様さながらの洗練された仕草に、一気に顔が赤くなった。

危ない危ない。ここで照れたらバレるかもしれない。私はさりげなく数歩下がって距離を取り、顔を隠した。
今だけは夕日に頼るしかない。どうか私の赤面を夕日でカモフラージュしてくれていますように。

「……ううん。とりあえずはそれだけ。後から追加してもいいのかな」
「もちろん。俺からこんなこと頼んでるんだし、余程のことがなければ西村に従うよ」

こういう優しさを見せてくるから、君を好きになる人が増えていくのに。顔が良くて優しいなんて、恋愛感情かはともかくみんな好意を持つに決まってる。ずるい。本当にずるい人だ。

「ありがとう。じゃあ、今日からよろしくね」

私たちはどちらからともなく握手をした。
少し骨ばっていて、温かい手が私の手を包む。まるでアイドルとの握手会みたいな、夢のような一瞬の出来事でありながら忘れたくない記憶が刻まれた。