そして最終日がやってきた。
今日で本当に終わり。今日が終われば、今までの遠くから眺めるだけの生活に戻る。
嬉しいような寂しいようなよくわからない感情に苛まれながら、放課後を迎えた。
今日は私のほうが早かったらしい。校門には誰もいない。帰宅部はとっくに帰っているし、運動部は遠くで声を上げて張り切っている。周りだけ静かな校門で、私は長谷川くんを待っていた。
「おまたせ」
小走りで駆け寄ってくる長谷川くんの首筋には汗が流れている。今日はかなり涼しいのに、汗をかくくらい急いで会いにきてくれたってことか。ちょっとした行為に一喜一憂してしまう自分が面倒くさい。
「ううん、全然待ってないよ」
私も漫画でしか聞いたことのない言葉で返す。
「行こ」
「うん」
校門を抜けて、長谷川くんの隣を歩く。長谷川くんはかなり背が高いほうなので、普通に歩いていたらすぐに追い越されそうなのに、歩幅も歩くスピードも私に合わせてくれている。こういうところがモテる理由の一つなんだろう。意識的なのか無意識なのかはわからないけど、とにかく細かな気遣いは嬉しいものだ。
これが全部夢だったら、私は喜んだだろうか。
「付き合ってほしい」と言われたのも、一緒に帰ったのも、下の名前を呼んでくれたことも、手を繋いでくれたことも、全部全部全部。全部私の夢の中の話で、実際は何の変哲もない日常だったら。それに、喜ぶとしたらどっちの意味で喜ぶだろう。長谷川くんと付き合えて良かったと喜ぶか、全部夢で良かったと喜ぶか。非現実的すぎて未だに現実を受け入れきれていない。
「今日で最後だね」
長谷川くんが前を見ながら呟いた。もう丁字路に着いていた。
「……うん」
私は呆けたような返事をする。
私はこの時間が寂しいのかな。もう二度と好きな人と帰るなんてできないだろう。でも長谷川くんに勘違いされて期間限定の恋人になったのも事実だ。最初に言われたようにいい迷惑だと思う。私は叶わないことを理解した上で彼に恋をした。アイドルのファンみたいに遠くから見ているだけで満足だったのに。
隣を一瞥すると、長谷川くんは楽しそうに今日の出来事を話している。私はたまに適当な相槌を挟む程度。
こんなに欲張りになったのは君のせいだ。こんなに近くにいたら、更に好きになっちゃうじゃん。私には釣り合わないってわかってるから、一線引くつもりだったのに。
やっぱり君が好きだ。
考えるより先に唇が動いていた。
「伊月くんに訊きたいことがあるんだけど」
「何?」
「恋愛感情、わかった?」
今日で本当に終わり。今日が終われば、今までの遠くから眺めるだけの生活に戻る。
嬉しいような寂しいようなよくわからない感情に苛まれながら、放課後を迎えた。
今日は私のほうが早かったらしい。校門には誰もいない。帰宅部はとっくに帰っているし、運動部は遠くで声を上げて張り切っている。周りだけ静かな校門で、私は長谷川くんを待っていた。
「おまたせ」
小走りで駆け寄ってくる長谷川くんの首筋には汗が流れている。今日はかなり涼しいのに、汗をかくくらい急いで会いにきてくれたってことか。ちょっとした行為に一喜一憂してしまう自分が面倒くさい。
「ううん、全然待ってないよ」
私も漫画でしか聞いたことのない言葉で返す。
「行こ」
「うん」
校門を抜けて、長谷川くんの隣を歩く。長谷川くんはかなり背が高いほうなので、普通に歩いていたらすぐに追い越されそうなのに、歩幅も歩くスピードも私に合わせてくれている。こういうところがモテる理由の一つなんだろう。意識的なのか無意識なのかはわからないけど、とにかく細かな気遣いは嬉しいものだ。
これが全部夢だったら、私は喜んだだろうか。
「付き合ってほしい」と言われたのも、一緒に帰ったのも、下の名前を呼んでくれたことも、手を繋いでくれたことも、全部全部全部。全部私の夢の中の話で、実際は何の変哲もない日常だったら。それに、喜ぶとしたらどっちの意味で喜ぶだろう。長谷川くんと付き合えて良かったと喜ぶか、全部夢で良かったと喜ぶか。非現実的すぎて未だに現実を受け入れきれていない。
「今日で最後だね」
長谷川くんが前を見ながら呟いた。もう丁字路に着いていた。
「……うん」
私は呆けたような返事をする。
私はこの時間が寂しいのかな。もう二度と好きな人と帰るなんてできないだろう。でも長谷川くんに勘違いされて期間限定の恋人になったのも事実だ。最初に言われたようにいい迷惑だと思う。私は叶わないことを理解した上で彼に恋をした。アイドルのファンみたいに遠くから見ているだけで満足だったのに。
隣を一瞥すると、長谷川くんは楽しそうに今日の出来事を話している。私はたまに適当な相槌を挟む程度。
こんなに欲張りになったのは君のせいだ。こんなに近くにいたら、更に好きになっちゃうじゃん。私には釣り合わないってわかってるから、一線引くつもりだったのに。
やっぱり君が好きだ。
考えるより先に唇が動いていた。
「伊月くんに訊きたいことがあるんだけど」
「何?」
「恋愛感情、わかった?」
