俺のmahitukiというアカウントから、真尋の使っていたSORAのアカウントに切り換え、メッセージを打ち込む。
真尋だったらどうするだろう。
真尋ならなんて思う?
そんなことばかりをずっと考え続けていたことに、最近になって気づいた。
鬱陶しかった。
SORAのアカウントに絡んでくる、見知らぬ女のアカウントが。
初めの頃は真尋にもファンが出来たと嬉しくもあったけど、すぐにイライラきてミュートした。
ヘタにブロックして俺の知らないところで騒がれるのも嫌だったし、なにより真尋ならそんなことはしないだろうと思うと他に選択肢はなく、たまに送られてくるDMも、適当に返すか無視していた。
真尋が病気のことを表に出してSNSをしていれば、きっとそれなりのフォロワー数を稼げていただろう。
実際生きているうちに、俺からそんなことを言った覚えもある。
だけど真尋は、それを否定した。
「俺は自分がこんな病気で生まれてきたことを恨んでるのに、それをネタにしてバズったって嬉しくないだろ」
その頃まだ小学生だった俺は、親に自分のスマホを買ってもらえてなくて、真尋がカッコいい最新機種を持ち、制限もなく自由に使えていることが、うらやましくてしかたがなかった。
「バズりたくねーの?」
「あー……。まぁ……ねぇな」
真尋は狭いながらも病院の個室に入っていて、白いベッドの背を少しだけ起こし、いつも静かに微笑みながら、寝転がっていた。
夏休みに入ると毎年にように帰省していた母の田舎は、海と山しかないようなところで、いいところといえば刺身が美味いことだけだった。
普段母がスーパーで買ってくる刺身は臭くてとてもじゃないけど食えたものではなかったけど、愛媛の田舎で食う新鮮な魚の刺身は、その辺の店で買ってきたものですら普通に美味しく食べられた。
小さな民宿をやっているばあちゃんとじいちゃんたちの手料理も、俺は好きだった。
真尋以外の従兄弟たちは成人していたり高校生だったりして、小学生の俺の相手をしてくれるのは、ベッドから動けない真尋しかいなかった。
一人っ子の俺は母の田舎に連れて来られても他に遊べるような友人もなく、真尋のスマホを借りて遊ぶ携帯ゲームが、その当時の一番の楽しみであり、それ以外他にすることは本気でなにもなかった。
母は民宿の手伝いや地元の友達と遊びに出掛けることに忙しく、祖父母も仕事やら地元の何かの集まりで家にはいない。
そんな俺の夏休みといえば、病院の消毒液の臭いと青白く光る冷たい床、病室の窓から見える空とサイドテーブルに積まれた大量のお菓子、ベッドに横たわり微かに微笑む、色白で痩せこけた真尋の記憶しかない。
「もうすぐ誕生日だよな。葉月はプレゼント、何をお願いするの」
「ゲーム。真尋は?」
俺の誕生日は八月二日で、真尋も同じ八月二日だった。
そういうところも、俺が真尋に懐いた一つの理由なのかもしれない。
「俺は……。お前がお菓子の食い過ぎで、腹を壊さないことを祈るよ」
「は? 別に食い過ぎてねーし!」
真尋が時折、彼の細く乾いたカサカサの手で、俺の腕や頬を撫でてくるのが不思議で仕方がなかった。
いま思えば、健康で満ち足りた体を持つ俺への嫉妬があったのだと思う。
「俺のほっぺ触るの、そんなに楽しい?」
「うん。柔らかくて気持ちいい」
真尋は体調さえよければ、小学校にもたまには顔を出していたし、中学校の入学式にも出席だけはしていた。
その時に撮った写真がベッドの周辺に飾られ、ちゃんとしたアルバムにもなっていつでも手の届くところに置かれていた。
真尋は時折それをながめながら、楽しそうに学校のことを俺に語って聞かせた。
「へー。真尋が消しゴムとか落としたら、みんな拾ってくれるんだ」
「そうだよ。音楽室に移動する時とかも、みんなで団結して一緒に廊下を進むんだ」
俺が消しゴムを落としても、誰も拾ってはくれない。
つもテストで満点を取って先生に気に入られているほのかちゃんが落としても、誰もそんなことはしない。
真尋がたまにしか学校に来ない車椅子の人だから特別扱いされてんだよと、そんな言葉を飲み込めるくらいの知能は、小学生の俺にもあった。
「真尋は学校、好きなんだ」
「うん。好き。だから毎日行けてる葉月がうらやましい」
学校なんて楽しくないし。
クラスの奴はウザい奴らばっかりだし、先生はうるさいし、朝からずっといなきゃいけないのがダルいから、俺はあんまり好きじゃない。
なんて、本当のことは言えなかった。
「俺も学校好き」
「……。はは、お前までそんなこと言うんだな」
「なんで? 学校って、楽しいところじゃないの?」
「みんな俺にはそうやって言うんだ。俺の行ったことがある場所は楽しいところで、行けない所は全部つまらないか、たいしたことないらしい。ネットでは、楽しかったって言ってるのにな」
真尋の細い手が、膝にかかったシーツを握り締める。
一人で孤独に耐える真尋に、俺はなんと言えばよかったんだろう。
こうしてそばにいること以外、何が出来ただろう。
声も出さずただ一人涙を流す真尋に、俺はゲーム機を置いてベッドの上に這い上がり、彼の隣に横たわると細い体を抱きしめて眠った。
「葉月はスマホが欲しいんだろ?」
その次の夏、帰省して訪れた俺に真尋がくれたスマホは、青みのかかった濃い灰色のスマホで、最新機種ではなかったものの、当時小学四年生だった俺には十分過ぎるものだった。
「え? もらっていいの? マジで!」
「いいよ」
真尋の手には、買い換えたばかりの真新しいスマホが握られていた。
目の覚めるような深紅のスマホは、それまでの俺が見たこともない色をしていた。
「なんだよ、真尋。そのスマホすっげー! カッコいい!」
「いいだろ。新しいの買ったから、そっちでよければやるよ」
SIMカードなんてものは当然入ってなくて、通話は出来なかったけどWi-Fiにさえ繋げれば普通に使えた。
両親公認で譲り受けたそれをいじり倒しているうち、真尋がSNSで使っているSORAというアカウントがあることに気づいた。
病室にいて多くは語らない彼の、人知れず吐き出された本心がそこに綴られていて、俺は初めて、本当の真尋を知った。
俺が今も使っている赤いスマホは、この時真尋が持っていたスマホだ。
当時は最新機種だったスマホも、今はすっかり古びていつ壊れてもおかしくない。
「村松くんってさ、なんでスマホ買い換えないの? それもう、めっちゃ古くない?」
高校一年の昼休み、廊下で俺に話しかけてきたのは、同じクラスの女子だった。
名前はたしか、菅野陽菜とかいう名前だったっけ。
「気に入ってるから、いいんだよ」
「だけどさぁ、重くない?」
スマホのことをとやかく言われるのは構わない。
だけど俺の腕を引いて、無理矢理画面の中まで覗きこもうとしてくるのは、勘弁してほしい。
「ねぇ、いつもどんなサイト見てんの? あ、空の画像だ。村松くん、空好きだよね。たまに写真撮ってるの、バレてるよ」
「バレてた?」
「うん。バレてた」
菅野さんはケラケラ笑っていたけど、何がおかしくて笑ってるのか、俺にはさっぱり理解出来ない。
「ねぇさぁ、ライン交換しよ。ヒマな時、メッセとか送ってもいい?」
「あぁ、うん」
別に女の子と連絡をとりあうのは、嫌いじゃない。
時々送られてくる意味不明なスタンプとか謎すぎる挨拶に、適当な返事を返していれば、いつか飽きて送ってこなくなる。
彼女たちの気まぐれに、ほんの少し付き合えば、いつもすぐに終わってくれた。
「じゃ、よろしく~」
彼女から即座に送られてきたプロフィールを、友だち許可しておく。
だいたい、友だちに許可ってなんだ。
友だち申請して許可された人が全部友だちだというのなら、真尋にだってもっとたくさんの友だちがいてよかったんだ。
偶然見つけたSORAのアカウントは、真尋が俺に見つけてほしくて、ワザとそのまま残した形でスマホを譲ったのか、単純に消し忘れただけなのかは分からない。
見てはいけないものを見てしまったような気がして、俺はそのアカウントの存在を胸の奥にしまった。
病室の窓から見上げる空ばかりの画像と、看病をしてくれている家族には見せられない本音があふれたそのアカウントは、俺には真尋から発せられる悲痛な叫び声にしか見えなかった。
真尋からグレイブルーのスマホをもらった翌年、彼の病状はさらに悪くなり、生きているのが不思議なくらい痩せこけていた。
夏休みになり、やっと帰省して会いに行けた俺は、対面早々その姿に強い衝撃を受けた。
それでも、にこにこと穏やかに笑う彼を前にして、俺は何も言うことが出来ず口をつぐんだ。
「真尋とまた一緒に、誕生日ができるね」
「うん。葉月が帰ってくるの、楽しみにしてたよ」
病室のベッドに横たわったまま動くことすらままならなくなった真尋を、取り囲んだ家族や親戚、病院のスタッフたちは「本当だねー」とか「盛大にしなくちゃね」とか、嘘ではない嘘を並べた。
変わり果てた姿に死期が近いことは、小五になった俺ですらすぐに分かったのに。
家のWi-Fiを通じてほぼ毎日のように真尋と連絡を交わしていても、実際に会うまで、俺には全く真尋の現状が分からなかった。
真尋自身が自分の病状を隠していたせいもある。
きっと彼自身、ネットの中では肉体を離れ、自由でいたかったのだろう。
誰もいない虚空に向かって、現実では絶対に誰にも言えない本心を叫び続けていた。
中学を卒業した真尋は高校進学を諦め、ベッドに横たわるだけの存在となって、ただ空を見上げ病室の中で生かされ続けた。
真尋だったらどうするだろう。
真尋ならなんて思う?
そんなことばかりをずっと考え続けていたことに、最近になって気づいた。
鬱陶しかった。
SORAのアカウントに絡んでくる、見知らぬ女のアカウントが。
初めの頃は真尋にもファンが出来たと嬉しくもあったけど、すぐにイライラきてミュートした。
ヘタにブロックして俺の知らないところで騒がれるのも嫌だったし、なにより真尋ならそんなことはしないだろうと思うと他に選択肢はなく、たまに送られてくるDMも、適当に返すか無視していた。
真尋が病気のことを表に出してSNSをしていれば、きっとそれなりのフォロワー数を稼げていただろう。
実際生きているうちに、俺からそんなことを言った覚えもある。
だけど真尋は、それを否定した。
「俺は自分がこんな病気で生まれてきたことを恨んでるのに、それをネタにしてバズったって嬉しくないだろ」
その頃まだ小学生だった俺は、親に自分のスマホを買ってもらえてなくて、真尋がカッコいい最新機種を持ち、制限もなく自由に使えていることが、うらやましくてしかたがなかった。
「バズりたくねーの?」
「あー……。まぁ……ねぇな」
真尋は狭いながらも病院の個室に入っていて、白いベッドの背を少しだけ起こし、いつも静かに微笑みながら、寝転がっていた。
夏休みに入ると毎年にように帰省していた母の田舎は、海と山しかないようなところで、いいところといえば刺身が美味いことだけだった。
普段母がスーパーで買ってくる刺身は臭くてとてもじゃないけど食えたものではなかったけど、愛媛の田舎で食う新鮮な魚の刺身は、その辺の店で買ってきたものですら普通に美味しく食べられた。
小さな民宿をやっているばあちゃんとじいちゃんたちの手料理も、俺は好きだった。
真尋以外の従兄弟たちは成人していたり高校生だったりして、小学生の俺の相手をしてくれるのは、ベッドから動けない真尋しかいなかった。
一人っ子の俺は母の田舎に連れて来られても他に遊べるような友人もなく、真尋のスマホを借りて遊ぶ携帯ゲームが、その当時の一番の楽しみであり、それ以外他にすることは本気でなにもなかった。
母は民宿の手伝いや地元の友達と遊びに出掛けることに忙しく、祖父母も仕事やら地元の何かの集まりで家にはいない。
そんな俺の夏休みといえば、病院の消毒液の臭いと青白く光る冷たい床、病室の窓から見える空とサイドテーブルに積まれた大量のお菓子、ベッドに横たわり微かに微笑む、色白で痩せこけた真尋の記憶しかない。
「もうすぐ誕生日だよな。葉月はプレゼント、何をお願いするの」
「ゲーム。真尋は?」
俺の誕生日は八月二日で、真尋も同じ八月二日だった。
そういうところも、俺が真尋に懐いた一つの理由なのかもしれない。
「俺は……。お前がお菓子の食い過ぎで、腹を壊さないことを祈るよ」
「は? 別に食い過ぎてねーし!」
真尋が時折、彼の細く乾いたカサカサの手で、俺の腕や頬を撫でてくるのが不思議で仕方がなかった。
いま思えば、健康で満ち足りた体を持つ俺への嫉妬があったのだと思う。
「俺のほっぺ触るの、そんなに楽しい?」
「うん。柔らかくて気持ちいい」
真尋は体調さえよければ、小学校にもたまには顔を出していたし、中学校の入学式にも出席だけはしていた。
その時に撮った写真がベッドの周辺に飾られ、ちゃんとしたアルバムにもなっていつでも手の届くところに置かれていた。
真尋は時折それをながめながら、楽しそうに学校のことを俺に語って聞かせた。
「へー。真尋が消しゴムとか落としたら、みんな拾ってくれるんだ」
「そうだよ。音楽室に移動する時とかも、みんなで団結して一緒に廊下を進むんだ」
俺が消しゴムを落としても、誰も拾ってはくれない。
つもテストで満点を取って先生に気に入られているほのかちゃんが落としても、誰もそんなことはしない。
真尋がたまにしか学校に来ない車椅子の人だから特別扱いされてんだよと、そんな言葉を飲み込めるくらいの知能は、小学生の俺にもあった。
「真尋は学校、好きなんだ」
「うん。好き。だから毎日行けてる葉月がうらやましい」
学校なんて楽しくないし。
クラスの奴はウザい奴らばっかりだし、先生はうるさいし、朝からずっといなきゃいけないのがダルいから、俺はあんまり好きじゃない。
なんて、本当のことは言えなかった。
「俺も学校好き」
「……。はは、お前までそんなこと言うんだな」
「なんで? 学校って、楽しいところじゃないの?」
「みんな俺にはそうやって言うんだ。俺の行ったことがある場所は楽しいところで、行けない所は全部つまらないか、たいしたことないらしい。ネットでは、楽しかったって言ってるのにな」
真尋の細い手が、膝にかかったシーツを握り締める。
一人で孤独に耐える真尋に、俺はなんと言えばよかったんだろう。
こうしてそばにいること以外、何が出来ただろう。
声も出さずただ一人涙を流す真尋に、俺はゲーム機を置いてベッドの上に這い上がり、彼の隣に横たわると細い体を抱きしめて眠った。
「葉月はスマホが欲しいんだろ?」
その次の夏、帰省して訪れた俺に真尋がくれたスマホは、青みのかかった濃い灰色のスマホで、最新機種ではなかったものの、当時小学四年生だった俺には十分過ぎるものだった。
「え? もらっていいの? マジで!」
「いいよ」
真尋の手には、買い換えたばかりの真新しいスマホが握られていた。
目の覚めるような深紅のスマホは、それまでの俺が見たこともない色をしていた。
「なんだよ、真尋。そのスマホすっげー! カッコいい!」
「いいだろ。新しいの買ったから、そっちでよければやるよ」
SIMカードなんてものは当然入ってなくて、通話は出来なかったけどWi-Fiにさえ繋げれば普通に使えた。
両親公認で譲り受けたそれをいじり倒しているうち、真尋がSNSで使っているSORAというアカウントがあることに気づいた。
病室にいて多くは語らない彼の、人知れず吐き出された本心がそこに綴られていて、俺は初めて、本当の真尋を知った。
俺が今も使っている赤いスマホは、この時真尋が持っていたスマホだ。
当時は最新機種だったスマホも、今はすっかり古びていつ壊れてもおかしくない。
「村松くんってさ、なんでスマホ買い換えないの? それもう、めっちゃ古くない?」
高校一年の昼休み、廊下で俺に話しかけてきたのは、同じクラスの女子だった。
名前はたしか、菅野陽菜とかいう名前だったっけ。
「気に入ってるから、いいんだよ」
「だけどさぁ、重くない?」
スマホのことをとやかく言われるのは構わない。
だけど俺の腕を引いて、無理矢理画面の中まで覗きこもうとしてくるのは、勘弁してほしい。
「ねぇ、いつもどんなサイト見てんの? あ、空の画像だ。村松くん、空好きだよね。たまに写真撮ってるの、バレてるよ」
「バレてた?」
「うん。バレてた」
菅野さんはケラケラ笑っていたけど、何がおかしくて笑ってるのか、俺にはさっぱり理解出来ない。
「ねぇさぁ、ライン交換しよ。ヒマな時、メッセとか送ってもいい?」
「あぁ、うん」
別に女の子と連絡をとりあうのは、嫌いじゃない。
時々送られてくる意味不明なスタンプとか謎すぎる挨拶に、適当な返事を返していれば、いつか飽きて送ってこなくなる。
彼女たちの気まぐれに、ほんの少し付き合えば、いつもすぐに終わってくれた。
「じゃ、よろしく~」
彼女から即座に送られてきたプロフィールを、友だち許可しておく。
だいたい、友だちに許可ってなんだ。
友だち申請して許可された人が全部友だちだというのなら、真尋にだってもっとたくさんの友だちがいてよかったんだ。
偶然見つけたSORAのアカウントは、真尋が俺に見つけてほしくて、ワザとそのまま残した形でスマホを譲ったのか、単純に消し忘れただけなのかは分からない。
見てはいけないものを見てしまったような気がして、俺はそのアカウントの存在を胸の奥にしまった。
病室の窓から見上げる空ばかりの画像と、看病をしてくれている家族には見せられない本音があふれたそのアカウントは、俺には真尋から発せられる悲痛な叫び声にしか見えなかった。
真尋からグレイブルーのスマホをもらった翌年、彼の病状はさらに悪くなり、生きているのが不思議なくらい痩せこけていた。
夏休みになり、やっと帰省して会いに行けた俺は、対面早々その姿に強い衝撃を受けた。
それでも、にこにこと穏やかに笑う彼を前にして、俺は何も言うことが出来ず口をつぐんだ。
「真尋とまた一緒に、誕生日ができるね」
「うん。葉月が帰ってくるの、楽しみにしてたよ」
病室のベッドに横たわったまま動くことすらままならなくなった真尋を、取り囲んだ家族や親戚、病院のスタッフたちは「本当だねー」とか「盛大にしなくちゃね」とか、嘘ではない嘘を並べた。
変わり果てた姿に死期が近いことは、小五になった俺ですらすぐに分かったのに。
家のWi-Fiを通じてほぼ毎日のように真尋と連絡を交わしていても、実際に会うまで、俺には全く真尋の現状が分からなかった。
真尋自身が自分の病状を隠していたせいもある。
きっと彼自身、ネットの中では肉体を離れ、自由でいたかったのだろう。
誰もいない虚空に向かって、現実では絶対に誰にも言えない本心を叫び続けていた。
中学を卒業した真尋は高校進学を諦め、ベッドに横たわるだけの存在となって、ただ空を見上げ病室の中で生かされ続けた。



