君に、届かない恋をした


夏休み10日目。

 今日は、志望校の学校説明会がある。

 幸せな毎日を送っているけれど、中学3年生のこの時期といえば、「勝負の夏」だ。

 私の学校では、一人二校は必ず学校説明会に行って、実際に話を聞いてくることになっている。

 これが、7月の大きなイベントだ。

 母が会社に行っている間、弟はおばあちゃんの家に行っている。

 父は、母より先に会社へ行く。

 だから、母が会社に行ってから帰ってくるまでの約7時間、私は一人なのだ。

 一人ということは、自由。

 ……とはいっても、受験生だから、気は抜けない。

 でも。

 この課題が終わったら、蓮くんが待ってる。

 そう思うと、不思議とパワーが湧いてきて、頑張れるのだ。

 最近はというと、NEX7の曲を一通り聴いてみた。

 YouTubeも、少しずつ見るようになった。

 調べれば調べるほど、知らなかったことがたくさん出てくる。

 だからこそ、なのかもしれない。

 ネットでこんな疑問を発信している人を見つけた。

『氷室蓮ってかっこいいって言われてますけど、どこがかっこいいんですか?』

 こっちからしたら、めちゃめちゃかっこいいからね!?

 ……と思ったのだけど。

 たしかに、人それぞれだ。

 好き嫌いだってあるだろう。

 それは、自由だ。

 でも、人のことを侮辱するのは良くないことだと思う。

 人間だって、動物も植物も、一生懸命生きてる。

 生きてるだけですごいのだ。

 えらいのだ。

 当たり前だけど、一人一人、ちゃんと感情だってある。

 そういうこと、簡単に言っちゃだめだから!

 たった一つの疑問を見つけただけなのに、そんなことを思った。

 いつもなら、見逃してしまうくらいの質問なのに。

 ……本当に、沼ってるな。

 そう思った。

 *

 ある日、NEX7のショート動画を見ていた。

 すると、

『何の数字でしょう?』

 と出てきて、カメラに向かって一列に並んだNEX7のメンバーが、それぞれ数字を言っていく。

 言い終わった人は列の最後尾へと移動して、違うメンバーへと変わる。

 私は、まだ本当に何も知らなかった。

 芸能界のことだって、本当に知らなすぎるんじゃないかと思うくらい、何も知らない。

 そんな私だから、

「彼女が初めてできた年かな?」

 なんてことを考えていた。

 ……我ながら、何を考えてるんだろう。

 でも、コメント欄を読んでみて、ようやく答えがわかった。

『事務所に入ったときの年齢』

 そういうことらしい。

 そして。

 蓮くんは、13歳だった。

 13。

 13歳。

 頭の中で、何度も繰り返す。

 13歳。

 私は、何をしていただろう。

 思い返してみる。

「せんぱぁい~♡」

 なんて言って、キュンキュンしていた日々。

「まだ一年生だから」

 を理由に、いろんな人に甘えていた。

 でも、蓮くんは違う。

 同じ13歳でも。

 私とは、全然違う。

蓮くんは、すごいなぁ。

そんなに小さなころから、みんなに「夢と希望」を与え続けていたんだ。

子どものころから頑張って、今こうしているんだ。

 また、住んでいる世界の違いを、現実に突きつけられた気がした。