私の小学生のころの物語。

第三章 「嫌」と言えなかった
 三年生。
 このころ、少し厳しい先生が担任になった。
 クラスには、まあ……うるさい人が多かった。
 授業中に集中できないことも、当たり前のようになっていた。
 そして私は、このころから少しずつ、「本当の自分」を外に見せないように気にするようになった。
 自分はどう見られているんだろう。
 何をしたら変に思われるんだろう。
 そんなことを、以前より考えるようになった。
 同時に、自分は女の子なんだ、という意識も強くなっていった。
 そんな三年生の記憶の中で、一番残っていることがある。
 いじめだった。
 私は運悪く、いたずら好きな男女と隣の席になった。
 最初は、ペンやハンカチを取られるくらいだった。
 でも、それは何度も続いた。
 そして、だんだんエスカレートしていった。
 とうとう、私のノートにまで落書きされるようになった。
 私は何も言えなかった。
 「ここで泣いたらダメ」
 そう思っていた。
 そして、
 「嫌って言ったら、仲間外れにされちゃう」
 とも思っていた。
 相手は、クラスの中でも目立つ存在だった。
 いわゆる「一軍」の女子と男子。
 だから、余計に怖かった。
 嫌だと思っても、嫌だと言えなかった。
 笑ってごまかすしかなかった。
 そんな日が、三週間ほど続いた。
 でも、ずっと隠していることはできなかった。
 ある日。
 私は布団にくるまって、声を殺して泣いていた。
 そこを、親に見つかった。
 隠していたことを話さなければいけない。
 そんな空気になった。
 私は、ボソボソと話した。
 全部を話したわけじゃない。
 話したのは、女子のほうだけだった。
 男子のほうについては、別の感情も生まれていた。
 恋。
 それが何なのか、まだはっきり分からなかったけれど、私はその男子のことを好きになっていた。
 それに、女子のほうにやらされていたようにも感じていた。
 だから、同じようには思えなかった。
 連絡帳に書いた。
 先生に提出した。
 そして、席を変えてもらった。
 それで、ようやく距離を置くことができた。
 私は決めた。
 もう二度と、あの女子には関わらない。
 今になっても、その女子のことは好きになれない。
 でも、男子のほうには、今でも違う感情が残っている。
 好きという気持ちと、嫌だった記憶。
 その二つが、同じ一年の中にあった。
 三年生は、私にとってそんな一年だった。
 「嫌」と言えなかった私。
 泣くことすら我慢していた私。
 そして、初めて恋というものを意識した私。
 いろんな感情が重なった一年だった。