『さよならの続きを、君と』

 第一章 再会

 「……寒い」

 白石美月は、駅前のベンチに座りながら両手をこすった。

 約束の時間まで、あと十分。

 スマートフォンの画面を何度も確認する。

 「まだ来ない……」

 そう呟いた瞬間、隣から声がした。

 「美月」

 「え?」

 振り返る。

 そこに立っていたのは、神谷蓮だった。

 一瞬、時間が止まったような気がした。

 「……蓮?」

 「久しぶり」

 昔と変わらない声。

 でも、少しだけ低くなった気がした。

 美月はゆっくりと立ち上がった。

 「本当に……蓮なの?」

 「何それ」

 「だって……」

 言葉が続かない。

 最後に会ったのは、三年前。

 あの日、蓮は何も言わずに美月の前からいなくなった。

 「……変わったね」

 美月がそう言うと、蓮は少し笑った。

 「美月も」

 「私は変わってないよ」

 「いや、変わった」

 「どこが?」

 「強くなった」

 美月は黙った。

 その言葉が、なぜか胸に刺さった。

 「……強くなんかないよ」

 「そう?」

 「うん」

 「じゃあ、どうしてここに来たの?」

 美月は答えられなかった。

 すると、蓮が小さく息を吐いた。

 「ごめん」

 「……何が?」

 「三年前のこと」

 美月の指が震えた。

 ずっと聞きたかった言葉。

 でも、聞きたくなかった言葉。

 「今さら……」

 「分かってる」

 「本当に、今さらだよ」

 声が少し震える。

 蓮は何も言わなかった。

 その沈黙が、かえって苦しかった。

 「私、ずっと待ってたんだから」

 美月は俯いた。

 「連絡くらいしてくれてもよかったじゃん」

 「できなかった」

 「どうして?」

 「……怖かった」

 美月が顔を上げる。

 「蓮が?」

 「違う」

 蓮はまっすぐ美月を見る。

 「美月に会うのが、怖かった」

 「……なんで?」

 「会ったら、戻りたくなると思ったから」

 その言葉に、美月は何も言えなくなった。

 しばらくして、蓮が口を開く。

 「でも、戻ってきた」

 「……うん」

 「今度は、逃げない」

 美月は目を伏せた。

 涙が落ちそうになる。

 でも、泣きたくなかった。

 三年前の自分とは違う。

 「……約束?」

 蓮は少しだけ笑った。

 「ああ。約束」

 そのとき、遠くから大きな声が聞こえた。

 「美月ーーー!」

 「え?」

 振り向くと、水野葵と桜井莉奈が走ってくる。

 「もう! 先に来てるなら連絡してよ!」

 莉奈が息を切らしながら言う。

 葵は蓮を見ると、驚いた顔をした。

 「……蓮?」

 「久しぶり、葵」

 「本当に久しぶりね」

 莉奈は二人を交互に見る。

 「え、何この空気……」

 「莉奈、黙って」

 「はい」

 美月は思わず笑った。

 三年ぶりに、自然に笑えた気がした。

 その後ろから、高橋颯真もゆっくり歩いてくる。

 「全員そろった?」

 「颯真、遅い!」

 「悪い悪い」

 そして、六人は久しぶりに同じ場所に集まった。

 誰も口にはしなかった。

 けれど、全員が分かっていた。

 今日が、ただの再会ではないことを。

 三年前に途切れた物語が、

 今、もう一度動き始めたことを。

 第二章 あの日の約束

 次の日。

 美月は約束の場所へ向かっていた。

 駅から少し離れた丘の上。

 そこには、小さな展望公園がある。

 三年前、二人で何度も通った場所だった。

 「ここ、まだあったんだ」

 美月が言うと、蓮は笑った。

 「なくなるわけないだろ」

 「そっか」

 二人は並んでベンチに座った。

 街が見下ろせる。

 遠くには、昨日までと変わらない景色が広がっていた。

 「覚えてる?」

 蓮が聞いた。

 「何を?」

 「ここで約束したこと」

 美月はしばらく考えた。

 そして、思い出した。

 高校最後の夏。

 二人でこの場所に来た。

 そのとき蓮は言った。

 ――卒業したら、またここに来よう。

 ――大人になっても、ずっと友達でいよう。

 あの頃は、それが当たり前に続くと思っていた。

 「……覚えてる」

 「俺、約束を破った」

 蓮の声が低くなる。

 「三年前、父さんの仕事の都合で引っ越すことになった」

 美月は黙って聞いていた。

 「急だった。学校も、家も、全部変わることになった」

 「どうして言ってくれなかったの?」

 「言おうとした」

 「じゃあ、どうして?」

 蓮は俯いた。

 「美月が泣くと思ったから」

 「……私が?」

 「うん」

 「泣いたよ」

 「え?」

 「蓮がいなくなったあと、毎日泣いた」

 蓮の表情が固まった。

 「でも、一番悲しかったのは、引っ越したことじゃない」

 美月は蓮を見る。

 「何も言わずに消えたこと」

 「……ごめん」

 「ずっと、嫌われたんだと思ってた」

 「違う」

 蓮はすぐに首を振った。

 「嫌いになったことなんて、一度もない」

 美月の目に涙が浮かんだ。

 「じゃあ、どうして……」

 「怖かったんだ」

 「また?」

 「うん」

 蓮は苦しそうに笑った。

 「美月に『行かないで』って言われたら、俺は行けなくなると思った」

 「……」

 「でも、行かなきゃいけなかった」

 風が吹いた。

 木の葉が二人の足元に落ちる。

 「だから逃げた」

 蓮はそう言った。

 「三年間ずっと後悔してた」

 美月は涙を拭った。

 「馬鹿だね」

 「うん」

 「すごく馬鹿」

 「分かってる」

 美月は少し笑った。

 「でも……」

 蓮を見る。

 「話してくれて、よかった」

 蓮も笑った。

 「ありがとう」

 その日、二人は夕方まで話した。

 三年間の出来事。

 学校のこと。

 友達のこと。

 家族のこと。

 そして、これからのこと。

 帰り道。

 蓮が言った。

 「美月」

 「ん?」

 「もう一つ、約束してほしい」

 「何?」

 「何があっても、今度はちゃんと話すこと」

 美月は少し考えてから頷いた。

 「約束する」

 今度こそ。

 二人は約束をした。

 第三章 六人の時間

 それから一週間。

 六人は毎日のように集まるようになった。

 「ねえ、昔みたいじゃない?」

 莉奈が笑う。

 「昔よりうるさいけどね」

 葵が言った。

 「それ誰のせい?」

 「莉奈」

 「即答!?」

 颯真が吹き出した。

 「相変わらずだな」

 美月も笑った。

 こんな時間がずっと続けばいい。

 そう思った。

 ある日の帰り道。

 葵が美月の隣を歩いていた。

 「ねえ、美月」

 「ん?」

 「蓮のこと、まだ好き?」

 美月の足が止まる。

 「……急に何?」

 「顔に出てる」

 「出てない」

 「出てる」

 「……」

 葵は優しく笑った。

 「無理に答えなくていいよ」

 「葵」

 「ただ、今度は自分の気持ちから逃げないで」

 美月は空を見上げた。

 夕焼けが広がっている。

 「うん」

 その日の夜。

 美月の家では、母の雪乃が夕食を作っていた。

 「今日は遅かったね」

 「友達と話してた」

 「蓮くん?」

 美月は驚いた。

 「……知ってたの?」

 雪乃は笑った。

 「駅で偶然見かけたの」

 「そっか」

 美月は椅子に座った。

 「お母さん」

 「ん?」

 「人って、三年も離れてたら変わるのかな」

 雪乃は少し考えた。

 「変わると思うよ」

 「じゃあ、前と同じには戻れない?」

 「戻らなくていいんじゃない?」

 美月は顔を上げた。

 「戻るんじゃなくて、今の二人で新しく始めればいい」

 その言葉が、胸に残った。

 第四章 言えなかった気持ち

 冬が深くなった。

 街にはイルミネーションが灯り始めた。

 六人で歩いていると、莉奈が突然立ち止まった。

 「ねえ、みんな」

 「何?」

 「私たち、来年どうする?」

 その一言で、空気が少し変わった。

 卒業。

 進学。

 就職。

 それぞれの未来。

 同じ場所にいられる時間には、限りがある。

 颯真が言った。

 「俺は県外の大学を受ける」

 「えっ?」

 葵が驚いた。

 「言ってなかったっけ?」

 「聞いてない!」

 莉奈も驚く。

 「私も県外」

 「莉奈まで?」

 「うん」

 美月は黙っていた。

 そして蓮を見る。

 「蓮は?」

 「俺も……」

 蓮が言葉を止めた。

 「海外の大学を考えてる」

 美月の胸が痛くなった。

 まただ。

 また離れる。

 「そっか」

 それしか言えなかった。

 帰り道。

 美月は一人で歩いていた。

 「美月!」

 後ろから蓮が追いかけてきた。

 「待って」

 「何?」

 「怒ってる?」

 「怒ってない」

 「じゃあ、どうしてそんな顔してる?」

 美月は立ち止まった。

 「……また離れるんだね」

 蓮は何も言わなかった。

 「三年前と同じじゃん」

 「違う」

 「何が違うの?」

 「今度は言った」

 「……」

 「黙って消えたりしない」

 美月は唇を噛んだ。

 「でも、寂しい」

 初めて素直に言えた。

 蓮が近づく。

 「俺も」

 「じゃあ、どうすればいいの?」

 「分からない」

 「……蓮でも分からないんだ」

 「うん」

 蓮は少し笑った。

 「だから、一緒に考えよう」

 美月も笑った。

 「うん」

 第五章 母の手紙

 年が明けた。

 美月は自分の部屋を片づけていた。

 机の奥から、一枚の古い封筒が出てきた。

 差出人は父だった。

 美月の父は、数年前に病気で亡くなっている。

 手紙を開く。

 そこには、短い文章が書かれていた。

 ――美月へ。

 ――人生には、どうしても離れなければならない日がある。

 ――でも、離れることと、終わることは同じじゃない。

 美月は何度もその文章を読み返した。

 その夜、母に聞いた。

 「お父さん、これいつ書いたの?」

 雪乃は少し驚いた。

 「見つけたのね」

 「うん」

 「あなたが大きくなったら渡そうと思ってた」

 美月は手紙を握った。

 「お父さんは、どうしてこんなこと書いたの?」

 雪乃は静かに答えた。

 「大切な人を失ったときに、前を向いてほしかったんじゃないかな」

 美月は涙を流した。

 「私、怖い」

 「何が?」

 「また大切な人がいなくなるのが」

 雪乃は娘を抱きしめた。

 「美月」

 「……うん」

 「大切な人との時間は、長さだけが大事じゃないよ」

 「……」

 「一緒にいた時間を、大切にできたかどうか」

 美月は母の肩で泣いた。

 その夜、美月は決めた。

 離れることを怖がるだけじゃなく、

 今、一緒にいられる時間を大切にしよう。

 第六章 最後の冬

 卒業式の日が近づいていた。

 六人で集まれる日も少なくなった。

 最後の休日。

 六人は、思い出の展望公園へ向かった。

 「ここに来るのも最後かな」

 莉奈が言う。

 「最後じゃないよ」

 葵が答えた。

 「また来ればいいじゃん」

 「でも、みんな遠くなるよ」

 「だから約束すればいい」

 颯真が笑った。

 「一年に一回、ここに集まる」

 「いいね!」

 莉奈が手を上げた。

 「絶対ね!」

 全員が笑った。

 美月はその景色を見つめた。

 六人で過ごした時間。

 笑った日。

 喧嘩した日。

 泣いた日。

 全部、大切な思い出だった。

 夜になり、四人が先に帰った。

 美月と蓮だけが残った。

 「美月」

 「ん?」

 蓮が小さな箱を取り出した。

 「これ」

 「何?」

 開けると、小さなペンダントが入っていた。

 「三年前に渡すつもりだった」

 「……」

 美月はそれを手に取った。

 「今さら?」

 「今だから」

 美月は笑った。

 「ありがとう」

 「気に入った?」

 「うん」

 「じゃあ、つけて」

 美月はペンダントを首につけた。

 月の形をしていた。

 「きれい」

 「美月に似合うと思った」

 「……そういうこと、さらっと言うのずるい」

 蓮は笑った。

 そして、静かに言った。

 「好きだよ、美月」

 時間が止まったようだった。

 美月は蓮を見る。

 ずっと待っていた言葉。

 ずっと聞きたかった言葉。

 「……私も」

 声が震える。

 「私も、蓮が好き」

 二人はしばらく何も言わなかった。

 ただ、隣にいた。

 それだけで十分だった。

 第七章 別れの朝

 卒業式が終わった。

 校門の前で、六人は写真を撮った。

 「せーの!」

 シャッターが切られる。

 六人の笑顔が写真に残った。

 けれど、その日の夕方。

 駅には、蓮を見送るために五人が集まっていた。

 「じゃあな」

 颯真が言う。

 「向こうでも頑張れよ」

 「うん」

 莉奈が泣きながら言った。

 「絶対連絡してよ!」

 「する」

 葵も涙を拭った。

 「また六人で会おうね」

 「約束」

 そして、美月の番になった。

 「……行っちゃうんだね」

 「うん」

 「怖い」

 蓮は美月の手を握った。

 「俺も」

 「また三年前みたいにならない?」

 「ならない」

 「本当に?」

 「本当に」

 蓮は美月の目を見る。

 「今度は、離れててもちゃんと隣にいる」

 美月は涙をこぼした。

 「……うん」

 電車がホームに入ってくる。

 「じゃあ」

 「うん」

 「またね」

 「またね」

 蓮が電車に乗る。

 扉が閉まる。

 電車が動き始める。

 美月は走らなかった。

 ただ、手を振った。

 見えなくなるまで。

 そして、小さく呟いた。

 「行ってらっしゃい」

 第八章 離れていても

 三か月が過ぎた。

 蓮からは、毎日のように連絡が来た。

 朝の「おはよう」。

 夜の「おやすみ」。

 くだらない話。

 学校の話。

 新しい友達の話。

 美月も自分の毎日を伝えた。

 離れている。

 でも、繋がっている。

 そんな日々が続いた。

 ある夜。

 蓮から電話が来た。

 「美月」

 「ん?」

 「今、外見て」

 美月は窓を開けた。

 夜空に月が浮かんでいた。

 「月?」

 「うん」

 「こっちでも見えるよ」

 「じゃあ、同じ月を見てるな」

 美月は笑った。

 「なんか、変なの」

 「何が?」

 「遠くにいるのに、近く感じる」

 「俺も」

 しばらく沈黙が続いた。

 でも、その沈黙は寂しくなかった。

 「美月」

 「ん?」

 「また会いに行く」

 「いつ?」

 「内緒」

 「なにそれ」

 笑い声が電話越しに響いた。

 離れているからこそ、分かることもあった。

 大切なのは、距離ではない。

 相手を想う気持ちを、言葉にすること。

 そして、信じること。

 第九章 もう一度、あの場所へ

 一年後。

 約束の日。

 六人は、あの展望公園に集まった。

 「久しぶり!」

 莉奈が叫ぶ。

 「みんな変わったね」

 葵が笑う。

 「颯真、髪伸びた」

 「そう?」

 「なんか大人っぽくなった」

 「俺は昔から大人だよ」

 「自分で言う?」

 全員が笑った。

 そして最後に。

 「遅れてごめん」

 聞き慣れた声。

 美月が振り返る。

 そこに蓮がいた。

 「……蓮」

 「久しぶり」

 美月は笑った。

 「おかえり」

 蓮も笑った。

 「ただいま」

 二人は並んで歩いた。

 去年と同じ道。

 でも、二人はもう去年とは違っていた。

 「覚えてる?」

 「何を?」

 「ここで言ったこと」

 美月は笑う。

 「いっぱいありすぎて分からない」

 「じゃあ、もう一回言う」

 蓮は立ち止まった。

 「俺は、美月とこれからも一緒にいたい」

 美月は驚いた。

 「ずっと?」

 「ずっと」

 「ずっとなんて、約束できる?」

 蓮は少し考えてから答えた。

 「ずっとを約束するんじゃない」

 「え?」

 「今日、一緒にいることを大切にする。それを毎日続けたい」

 美月は笑った。

 「それなら、私も約束する」

 夕日が二人を照らした。

 最終章 さよならの続きを、君と

 数年後。

 美月は一人で駅前のベンチに座っていた。

 昔と同じ場所。

 けれど、あの頃とは違う。

 スマートフォンを見る。

 画面には、蓮からのメッセージ。

 ――着いたよ。

 美月は笑った。

 「遅い」

 すると、後ろから声がした。

 「ごめん」

 振り返る。

 そこには蓮がいた。

 「久しぶり」

 「久しぶり」

 二人は笑った。

 美月は空を見上げる。

 あの日と同じように、白い息が空へ消えていく。

 「ねえ、蓮」

 「ん?」

 「三年前の今日、ここで会ったんだよね」

 「そうだな」

 「私、あのとき思ったの」

 「何を?」

 「もう終わったんだって」

 蓮は黙って聞いている。

 「でも、違った」

 美月は笑った。

 「終わったんじゃなくて、続きが始まったんだよね」

 「うん」

 蓮が頷く。

 「さよならは、終わりじゃなかった」

 美月はペンダントに触れた。

 あの日もらった、月の形のペンダント。

 今も大切に身につけている。

 「ねえ」

 「何?」

 「これから先も、いろんなことがあるよね」

 「あると思う」

 「喧嘩したり、離れたり、また会ったり」

 「うん」

 「それでも、一緒にいられるかな」

 蓮は笑った。

 「一緒にいよう」

 美月も笑った。

 「約束?」

 「ああ」

 今度の約束は、未来を縛るものではなかった。

 離れないことを誓うものでもない。

 離れてしまったとしても、また歩き出せると信じるための約束だった。

 駅前の時計が、午後六時を告げる。

 三年前と同じ時間。

 けれど、二人の時間はもう、あの日の続きではない。

 新しい今日になっていた。

 美月は蓮の隣に並ぶ。

 「行こう」

 「どこへ?」

 「どこでもいいよ」

 「じゃあ、歩こうか」

 「うん」

 二人は歩き始めた。

 後ろには、あの日の駅。

 前には、まだ見たことのない道。

 さよならを経験したからこそ、

 出会えた今を大切にできる。

 失った時間があったからこそ、

 これからの時間を大切にできる。

 美月は隣を歩く蓮を見た。

 そして、笑った。

 「ねえ、蓮」

 「ん?」

 「これからもよろしくね」

 蓮も笑った。

 「ああ。こちらこそ」

 二人の影が、夕暮れの道に長く伸びていく。

 その先に何が待っているのかは、まだ誰にも分からない。

 それでも。

 もう、怖くはなかった。

 さよならの先には、

 また出会える日がある。

 終わりの先には、

 新しい始まりがある。

 だから、美月は歩いていく。

 大切な人と。

 大切な思い出を胸に。

 そして――

 さよならの続きを、君と。