気が付くと俺は病室のベットで寝ていた。それに気づいた両親が俺の顔を覗き込んでくる。目が冴えていくにつれ、俺は意識を失う直前の記憶がよみがえってきた。そして、母の泣き顔を見ながら、俺は口を開いた。
「嘘じゃ……ねぇの?」
「あぁ」
父が静かにそう答えた。母は堪えられなくなったのか床に崩れ落ちた。そんな両親の姿を見ながら俺は正直に言った。
「俺は信じない。信じねぇから」
俺は走れないことを信じることができなかった。走ることが生きがいだった俺に信じるのは認めるのは難しかった。
それから俺はすぐに退院して部活に復帰したかったが、医師と両親の説得でそのまま入院することになった。俺はまた走るためならばと治療を受け入れた。
そうやって始まった入院生活。吐き気は相変わらずあり、たまに食べたものを戻す時もあった。それでも俺はまた走るために治療を続けた。部活の仲間には余命のことは言わず、一時入院して完治したら退院すると伝えていた。
そんな日々を送って一週間が経った。その日はいつもより調子が良くて、体を動かそうと思い医師の許可を取って病院の庭に向かった。そこには子供たちからお年寄りの方まで、それぞれが好きなように過ごしていた。俺は人がいなさそうな方へ行き、久々に動かすため体を入念に解す。まだ過度な動きはしないようにと医師に言われたので、走る以外体を動かした。動かしたい分だけ体を動かせたので今日はもう戻ろうとしたとき、俺の前で立ち止まった見覚えのある人がいた。
「あ、東?」
「やっぱり君だったんだ、風見」
びっくりしたよと言いながら近づいてくる東に俺は後退る。今、一番会いたくなかった東仁が俺の目の前に現れたのだ。
「な、んで、ここに?」
「親戚が入院しているからね」
「そっ…か」
俺たちの間に沈黙が流れる。東はいつも通り綺麗な顔で微笑んでいる。俺はこいつが苦手だ。陸上では好敵手だとは思っているが、こいつ自身をあまり得意にはなれなかった。東仁、ひがしと書いてあずまと読むことを、こいつをきっかけに知った。東とはよく陸上の全国大会で出会っていた。俺はいつもこいつにはあと一歩及ばない。俺が全国大会で優勝を取ることが出来なかったのはこいつがいたからだった。
「じゃ、俺は病室に戻るから」
そんな相手にこんな姿を見られたくはなかった。だから俺は早々とここを立ち去ろうと東に背を向けた。
「あ、待って」
俺を呼び止める声が聞こえたが、俺は黙ってこの場を去った。
その日の夜、終わりのないトラックを一人で永遠と走っている夢を見た。
「嘘じゃ……ねぇの?」
「あぁ」
父が静かにそう答えた。母は堪えられなくなったのか床に崩れ落ちた。そんな両親の姿を見ながら俺は正直に言った。
「俺は信じない。信じねぇから」
俺は走れないことを信じることができなかった。走ることが生きがいだった俺に信じるのは認めるのは難しかった。
それから俺はすぐに退院して部活に復帰したかったが、医師と両親の説得でそのまま入院することになった。俺はまた走るためならばと治療を受け入れた。
そうやって始まった入院生活。吐き気は相変わらずあり、たまに食べたものを戻す時もあった。それでも俺はまた走るために治療を続けた。部活の仲間には余命のことは言わず、一時入院して完治したら退院すると伝えていた。
そんな日々を送って一週間が経った。その日はいつもより調子が良くて、体を動かそうと思い医師の許可を取って病院の庭に向かった。そこには子供たちからお年寄りの方まで、それぞれが好きなように過ごしていた。俺は人がいなさそうな方へ行き、久々に動かすため体を入念に解す。まだ過度な動きはしないようにと医師に言われたので、走る以外体を動かした。動かしたい分だけ体を動かせたので今日はもう戻ろうとしたとき、俺の前で立ち止まった見覚えのある人がいた。
「あ、東?」
「やっぱり君だったんだ、風見」
びっくりしたよと言いながら近づいてくる東に俺は後退る。今、一番会いたくなかった東仁が俺の目の前に現れたのだ。
「な、んで、ここに?」
「親戚が入院しているからね」
「そっ…か」
俺たちの間に沈黙が流れる。東はいつも通り綺麗な顔で微笑んでいる。俺はこいつが苦手だ。陸上では好敵手だとは思っているが、こいつ自身をあまり得意にはなれなかった。東仁、ひがしと書いてあずまと読むことを、こいつをきっかけに知った。東とはよく陸上の全国大会で出会っていた。俺はいつもこいつにはあと一歩及ばない。俺が全国大会で優勝を取ることが出来なかったのはこいつがいたからだった。
「じゃ、俺は病室に戻るから」
そんな相手にこんな姿を見られたくはなかった。だから俺は早々とここを立ち去ろうと東に背を向けた。
「あ、待って」
俺を呼び止める声が聞こえたが、俺は黙ってこの場を去った。
その日の夜、終わりのないトラックを一人で永遠と走っている夢を見た。
