春夏秋冬花祭 —夏の花は、不知火に結われて—

 そのまま、時は過ぎ。

 八月に入って、少し経った頃。

 紅羽の部屋に遊びに来た結俐は、綺麗な浴衣を着ていた。

 黒地に、桃色や藤色、水色の花があしらわれている。

 白い帯がよく映えている。

 その姿を見た紅羽は、わぁ、と感嘆の声を漏らした。

 結俐が、恥ずかしそうに微笑む。

「お姉ちゃんに支度してもらったの。髪も」

 彼女はそっと、自身の飴色の髪に手をやった。

 編み込みで横髪がまとめられている。

 後ろ髪はお団子で、そこに藤の花簪が差し込まれている。

「綺麗だね。いいなぁ……」

「紅羽のために、浴衣と花簪を選んであるよ。ちょっと高かったから、雄輝さんにお金は貰ったけどね」

「え……?」

 紅羽は目を瞬かせる。

 結俐は悪戯っぽく微笑み、ぱん、ぱん、と手を二度叩いた。

 すると、扉がかってに開いた。

 そこから顔をのぞかせたのは、浴衣と花簪を手に持った、絵美だ。

「絵美さんにもお手伝いをお願いするから、紅羽も安心していいよ。……ちょっと早い?」

「ううん」

 紅羽は、首を横に振った。

 そして、申し訳なさそうに眉を下げて、視線を下に落とす。

 その手が、爪を弄り始めた。

「私、歩くの遅いから。早めに着替えてゆっくり歩いて、ちょうどいいと思う」

「気にしなくていいよ、紅羽」

 すかさず、結俐がフォローに回った。

 彼女の手が、紅羽の手を掴む。

 そのとき、紅羽は結俐の爪がネイルされていることに気が付いた。

 海のような色合いの下地に、星屑のような煌めくスパンコールが散らされている。

「それ……」

「ん? あ、ネイルのことね。紅羽もしたい?」

「う、うん……やってみたい、けど」

 紅羽はちらりと絵美を見た。

 絵美が力強く頷くと、結俐は紅羽の頭を撫でた。

「ネイルは絵美さんができるよ。浴衣着て、髪結って……それと一緒に、ネイルもしよっか」

「いいの……?」

「うん。体力が持つように、休みながら、やろうね」

 紅羽の顔が、ぱっと輝いた。

「じゃあ、絵美さん」

「ええ、結俐さん」

 絵美も気合十分に、頷いてくれる。

 結俐は紅羽のための浴衣を受け取り、花簪をサイドテーブルに置いた。

 絵美は、紅羽がベッドから降りるのを手伝う。

 結俐は、紅羽に向けて、自信ありげに笑った。

「じゃあ、着付け、始めるよ」