ありふれた毎日に光の花束を

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「それじゃあこの文章を……一ノ瀬さん、読んでくれるかしら」

 現代文の時間。24歳でまだまだ若々しい花咲先生。年が近いからか生徒からも好評で慕われている。

「一ノ瀬さんー??」

 先生がそう言いながらこちらに歩いてくる。隣を見ると、紬は寝ていた。


「つむぎっ、つむっ……起きてってば」
「ん~」


「一ノ瀬紬さん。授業中ですよ。起きてください」
「ひゃいっ!!」

 クラス中大笑い。先生も笑いをこらえきれずに吹き出してしまっていた。

「はい、じゃあ、33ページから、読んでくれる?」
「は、はい! えっと……部活の時間になると、生徒は──」


 さっきまでの慌てぶりが嘘のように、紬の声が教室に響いた。

透き通るような声で、すっと耳に馴染む綺麗な朗読。

 登場人物の心情が伝わってくるようなその声に、

さっきまで笑っていたクラスメイトたちも、いつの間にか静かに聞き入っている。

 
読み終えて紬がふう、と息を吐くと、花咲先生は嬉しそうに目を細めた。


「うん、感情がこもっていて素晴らしいわ。次は居眠りしないようにね」

「はぁい」

といって両手を合わせて「ごめんね」のポーズをしながら、

紬はにこっとお茶目に笑った。


「もう、一ノ瀬さんは調子がいいんだから」

 するとまた、クラスでどっと笑いが起こる。

紬は、このクラスになくてはならない存在。改めてそう感じたのだった。