あの子みたいには、なれなくて。だから私は私を生きる。

そして授業が終わり、私は一人静かに教室に佇んでいた。

掲示板に貼ってある掲示物を全部、ぐしゃぐしゃに丸めてやりたかった。


「それな」

女子の高い黄色い声が教室に響いた。

まだ、いたんだ。


「一ノ瀬紗良ってさ、うざいよね」

「分かるわー。彼氏できたんだよ、すごいでしょうって、自慢げだよねぇ」

「一軍にも入れたの、ぐーぜんのくせにさ」



ああ、悪口だ。


前の私なら、

『やめなよ!紗良が傷ついちゃうから、絶対に悪口言わないで!』

と勇猛果敢に一軍女子の輪に入り込んで行っただろう。


でも、今の私には、それがひどくみじめに思えた。昔の自分を蔑んだ。

何してんだろう、ばっかじゃないの。



「あ、雛森さんだ」

「こ、こんにちは」


一軍女子のリーダーらしき女子が、こちらに歩み寄ってきた。


「雛森さん、ここで何してたの?」

「え、あ。何も……。ちょっと怪しく見えますよね」


「別に?アタシらの悪口、聞いてた?まあ良いけどさ。雛森さんが紗良といつも一緒だから、びびったけど」

「良いの、良いの。紗良のことなんてもう大嫌いだから」


「へー、そうなんだ。なんで?」

「紗良は、私のこと蔑んできた。まあ、私が地味だから蔑まれるのは当然なんだけど、見下してほしくなかったんだもん」


「そーなんだね〜。でさでさ」


リーダー格の女子は、すぐに輪に戻って行った。

私のことなんか、ただのお遊びに過ぎなかったのだろう。