あの子みたいには、なれなくて。だから私は私を生きる。

何分か歩いて行くと、中学校に着いた。

銀杏の葉が生い茂って、豊かな秋だと感じさせる。



「おはようっ!」

「あ、凛花!おはようー!」

「おはよう!」

「おはよう麗羅!」

「ところでさ、シルバーウィークって何すんの?」

「えー、まだ先じゃないの?」

「ふっふっふっ、予定が何事も肝心なのよ」

「そっかぁそっかぁ」



あちこちで聞こえてくる元気な挨拶に、耳を背けたくなる。


私には紗良しか頼れる「友達」はいない。


紗良は、無邪気なところもあるけれど、場の空気を読んで必要なことができる子だ。


あんまり親友を悪くは言いたくないけれど、やっぱり、紗良も私と同じように地味だ。

スカートの丈も長いし、メイクなんてしてない。

黒縁の厚いメガネをかけて、休み時間も机でひっそりとしている。



そんなことを考えながら、教室の机に着く。

ホームルームがもうすぐ始まっちゃう、急がないと。


いそいそと支度をしている最中、教室の扉がガラッと開く。


「えー!!」

みんなのびっくり仰天した声がこだました。

な、何事?

振り返ってみると、ドアの前には、美少女が立っていた。

漆黒の髪を緩くウェーブにし、ミルクティーのようなベージュのインナーカラーを入れている。

前髪は横に流しており、大きな丸い瞳が目立っていた。


編入生かな?


「やっほー、紬」


ふぇ!?

裏返った声を出してしまった口を慌てて塞ぐ。


編入生さん、私のこと知ってるの?

どこかで会ったことあるとか?


いろいろ考えを張り巡らせても、一向に答えは見つからない。

一度も会ったことないし、関係がなかった気がするんだけどな。


はて、と首を傾げていると、その美少女は口を大きく開いた。


「嘘!私のこと覚えてない?記憶喪失?」

「いいえっ!会ったことない、と思いますけど」

「そんなぁ。私だよ、私」

美少女は肩をガックリと落としながら続けた。

「紗良だよぉっ!」


さ、ら?

紗良なの?

私の知っている紗良は、こんな感じじゃなかったんだけれど……。


「新学期デビューってやつ、してみたんだよね!どう?前よりは良いかな?」

鏡を見ながら、紗良は言った。

紗良の声が、遠く聞こえていた。