どっかの誰かの物語

 朝はお母さんの声で起きる。スマホのアラームと格闘をして、二度寝をすると決めている。

 「蓮花(れんげ)起きなさーい!」という声が階下から聞こえてくる。

 うるさいなと呟きながら「はーい。今行くー」と体を起こしながら答える。

 スマホで友達の由佳(ゆか)からDMがきているかどうかを見る。

 インスタを開くと、由佳からメッセージがきていて、今日遊びに行くかどうかという内容だ。

 それに返信しながら、今日の予定を考える。青春漫画に出てくるようなきらびやかな制服に着替えて、階段を降りる。

 「お母さん、おはよう」と言いながらテーブルにつく。

 「おはよう、蓮花。」と冷蔵庫から牛乳を一本取りながらお母さんが言う。

 家にいたくない一心で私は外に出る。

 駅で由佳と待ち合わせをして、他愛のない話をしながら学校まで歩く。

 学校の最寄りの駅に着くと由佳は「私先行くね、バイバイ」と一緒に学校に行くことを拒否するかのような笑顔で走り去っていく。

 「うん、バイバイ」とそれに応える。

 学校で由佳と隣のクラスだが、会いにいくことも廊下ですれ違った時などの時も私たちは目を合わせることも手を振ることもない。

 私も由佳が虐められていることをなんとなく分かっている。

 なので私も自分のクラスの3軍の女の子といつも一緒にいて、いじめの標的にならないようにしている。そのおかげでいじめにあっていない。

 学校の外や誰もいない所では由佳とはいつも話す。ただ学校内だけ目を合わせない。

 自分の席に着くといつも仲良くしている女の子、衣香(いこう)と漫画の話をする。最近流行っているアニメが漫画化されることなど、漫画に関する話をチャイムが鳴るまで続ける。

 チャイムが鳴るとクラスの中に散らばっている、クラスメートたちはみんな席に戻っていく。

 私も自分の席に座って図書館で借りた定番の青春小説を読む。

 窓の外には朝の太陽の光が雲から光が漏れ出ている。

 移動授業、私は衣香と化学実験室にいく。
 その途中に由佳がいた、教室にいてどうやら教科書を探しているようだ。一瞬由佳と目が合ったが私はすぐに目を逸らす。そして、気が付かないふりをしながら衣香と歩き去った。

 帰りのホームルームが終わり、衣香にバイバイと言っていつもの場所に行って由佳が来るのを待つ。

 空はもう夕焼けの太陽の色で埋め尽くされていた。

 「ごめん。待たせちゃった?」と由佳が笑顔で向こうから走ってきた。

 「大丈夫だよ。全然待ってない!」と私も笑顔で言う。

 私たちはどうでもいいような話に花を咲かせながら家まで歩く。

 「ねー蓮花ー」 由佳の顔を見ると笑顔ではあるが少し目が笑ってない。

 少し緊張しながらも「何?由佳」と応える。

 「今日、目あったよね?ということはは蓮花はいじめをしている訳だよ?」
 由佳からこの話題が出るのは予想外だ。

 「何言ってんの?由佳?」

 「蓮花はいじめをしているということになるんだよ。」

 「そ、そう…」

 「まあいいや。蓮花はどうしたいか分からないけど今まで通り接してね。」と由佳は目を細めた。

 「うん」戸惑いながら私は応える。

 駅で由佳と別れる。

 空を見ると空はもう日が落ちそうで遠くに入道雲が浮かんでいる。

 気持ちを落ち着かせるために家から近い所にある砂浜に行く。

 砂浜に着くともう空は星に埋め尽くされていて、夏の大三角が見える。前髪を海風が撫でる。

 人があまり来ない所に行き、そこで柔らかい砂の上に寝転がる。

 私はいじめをしているつもりはないのだが、由佳は私がいじめに加担していると思ったのか?私としては由佳の意思を尊重したけれど…

「お姉さんもこの場所知ってるんだ…すごいね」

向こうから歩いてくる白いワンピースと黒い半ズボンの年齢不詳少女が出した声だ。

「あなた誰?」驚きながら私は言う。

「さあ誰だろう。私は私を必要とする人の元に現れるから。」とその少女は、私の隣に寝転ぎながら言う。ここの砂柔らかいなと少女は驚く。

言っている意味が分からないが、その少女に問う。

「と言うことはあなたは私を助けてくれるってこと?」と私は言う。

「まあそうなるね」と少女は言った。

「とりあえずあなたの名前教えてくれるかな?」と続ける。

「私の名前は蓮花。あなたの名前、教えてくれないかな?」と答える

「言ったでしょ。私は私を必要とする人の元に現れるから、自分の名前なんてないよ。」

「そうなのね。なら私が付けてあげる。うーんと不思議ちゃんってのはどうかな?」

「いい名前だね。その名前ありがたく受け取らせてもらうよ。」と不思議ちゃんは笑ったと思う。暗くてみえないからだ。

「で、蓮花の悩み教えて?」

「え悩み…」

「そう蓮花の悩みあるでしょ?」と応える

不思議ちゃんがここにいる意味を考えて意を決して由佳のことを言う。


学校の最寄りの駅で由佳が先に行く。「バイバイ、蓮花。先いくね」と由佳が笑顔で言う。こうなったのはいつからだろう。私たちが高校1年生の春休み前だったような気がする。

最初は由佳にも由佳の事情があると思ったが、由佳が先に行くという日が続いた。

ある日、私は移動授業の時に教科書を忘れたので、教室に取りに行った時に由佳の教室の前を通ると由佳が1人で教室の中で泣いていた。

由佳の前には明らかに人が破いたようにしか思えない教科書が置いてあった。それを見た瞬間に強い衝撃が体に走った。

私は、驚いたがすぐに由佳の教室の前で止まった足を動かした。足を動かしながらさっき見たことを頭の中で整理する。

その時からチャイムの音が鳴る時まで、何も頭の中に入ってこなかった。

由佳は下を向いて泣いていたので多分私だと気づかなかったと祈る。

次の日待ち合わせ場所で由佳に会ったらついに思惑(おもわく)から確信に変わった。

「おはよう、蓮花。いこ」と由佳が来る。

「う、うん行こっか。」

もうすぐで学校の最寄りに着くところで私は由佳に尋ねた。

「ねえ、由佳。」

「なに?」

「由佳っていじめられてるよね…?」と由佳を逆撫でしないように聞く。

「えっ?蓮花?なんって言ったの?」

「だから、由佳っていじめられてるよね…?」と言う

「そうだけど…」と由佳があっさり言う。

えっ、と私はこのことで由佳が否定してくれることを願った。

「昨日、私が泣いてる時に教室の前通ったの蓮花だよね?」と由佳が続けた。

「え、え、え、なんで分かるの?」と頭が真っ白になる。

「それは秘密。蓮花(れんげ)は私がいじめられてるって知ってることになる。いい?この件は私が片付ける。蓮花は首を入れないでね?」
と言う由佳の顔は笑顔だが目とても怖い。

「う、わかった。」と戸惑いながらも私は首を小刻みに上下に振った。

由佳が先に行って私は、1人になって考える。本当にこのままでいいのか?と親友がいじめられているのを黙って見ているのが親友なのかと。しかし由佳は我慢強く、なんでも自分で解決しようとする癖がある。

教室につき、衣香が話しかけてきたので思考をやめて、お喋りする。

そしてまた一日が過ぎていく。

その後の毎日も由佳はいじめられ、私は見て見ぬ振りをしている。



「そう言う訳だよ、不思議ちゃん。」と私は話を終わらせる。

「へぇぇ」と不思議ちゃんが反応する。

「蓮花の親友さんってなんかすごいね。でもたまには親友を頼ってもいいと思うんだよね」

「大人は必ずしも頼らないといけない訳じゃ無いから」と続けた。

「そうだよね」と相槌を打つ。

「よし!終わり!また会おうね。すぐ会えるよ。」と言い不思議ちゃんは来た方向に戻っていく。

その背中「また会おうねーーー!」と叫ぶ。

不思議ちゃんに多分、聞こえていると思う。