君が夢みた世界を知りたい

夢斗の世界〜聞こえたいから〜
深い黒が明けて空の淵に赤く燃えるような雲が見えた頃、自然と目が覚めた。少し頭痛がする。あぁ、今日も雨か。今日は病院で薬をもらったほうが良さそうだ。制服を着て、スクールバッグにマイナンバーカードと診察券を入れた。今日は親も仕事を休めないらしいから久しぶりに外を歩いていこう。いつもとは少し違う景色。空調の効いた車の中では決して味わえない空気。憂うつだった心もシャッターを切るごとに穏やかになっていく。今はこんなに優しくて落ち着いている空なのにこれから雨が降るなんてとても思えない。でも降る。天気予報からも気圧の変化による頭痛からも分かる。なんかちょっと便利だな、面白いな。そんなことを考えているうちにかかりつけの総合病院に着いた。最後に来たのは二ヶ月前だそうだ。先生からCTと聴力検査を受けるよう指示された。もう何回この部屋に入っただろう。見慣れた狭くて白い部屋。そこに寝そべる。目を閉じて少ししたら起きて、聴力検査を受けに耳鼻咽喉科へ向かう。ここにある彩は相変わらず面白みがないな。人工的な明るい黄色、行き交う人たちの死んだ魚の目、疲れを隠しきれない看護師たちの白。こんなのカラスも食べようと思わないだろう。そのとき見慣れた青の制服が椅子に座っていた。いや、丁寧に言えばうちの学校の制服を着た女子生徒が椅子に腰掛けていた。どこかで見たことがあるような無いような…。あ、昨日倒れていたあの子か。さすがに病院に行くよな。あんなおおごとになったら。
パチッ…目が合ったな。そんな気まずそうにしなくてもいいのに。会釈ってなんだよ。少し面白がりながら笑みを浮かべ、会釈を返した。