君が夢みた世界を知りたい

羽歌の世界〜期待してないはずなのに〜
結局持ち帰ってしまった。自宅の部屋でノートとにらめっこをする。純粋に絵を褒められたのは嬉しい。けれど、「一目惚れをしました」だの「名前も知らない君へ」だの正直、ポエムみたいで少し嫌悪感がしてしまう。相手が変な人じゃない。そう確信できる要素がないのだ。それでも持ち帰ってしまったのはきっと心のどこかでこれは自分を変えるきっかけになるとヒロイン気分になっているからだ。夢をみるのはもうやめよう。そんなふうに世界を悲観していた主人公の前に突然現れた送り先不明の謎のノート。そんなご都合主義の物語みたいなことがあってたまるか。それでも。それでも本当に物語みたいに全てが上手く回り始めるのだとしたら。もし上手くいかなかったらその時は相手も道づれにするか。覚悟を決めジェットボールペンシルを握った。そして、翌朝外で雨音がする中「交換ノート」を机に置いた。

夢斗の世界〜期待してないはずなのに〜
ノートを置いた次の日の昼休み。昨日置いたノートに返答はきているのか確認をする。すると案外達筆な文字で
「名前も知らないあなたへ
 交換ノート。おもしろそうですね。私の絵を褒めてくださってありがとうございます。あなたの好きなことは何ですか?まずはお互いのことを知ることから始めたいです。」と黒のボールペンで書かれていた。ノートの線に綺麗に揃えてあるところから見てこの人は几帳面なのだろう。なんだか人の新しい部分に触れた気がして心臓が跳ね上がると同時にとてもゾクゾクしていた。そこでようやく自分がどれだけ人に無関心だったのかを知った。この人を知ると自分を知るきっかけにすることができる。なら、この人は僕のことを、僕の飢えを分かってくれるかもしれない。音色が抜け落ちた僕を理解することができるんだ。その日から彩以外で僕を満たせるかもしれないものが増えたんだ。