君が夢みた世界を知りたい

羽歌の世界〜手に入ればいいのに〜
昼休み、いつものように人気の少ない中庭にある階段の影で購買で買ったクリームパンを食べ、薬を飲む。本当に不味い。(イソバイド アデホスコーワ メコバラミン 柴苓湯)飲んでも変わらないのだから意味がないと思うが飲まなかったときの最悪のリスクが頭をよぎるので飲み続けている。そんな毎日だった。しかし、今日はいつもの場所にいつもはいないカップルがいた。到底落ち着いて食べることなんてできるわけが無い。やむを得ず、美術室で食べることにした。いつもとは違う油絵の具の香り、思わず目に入る鮮やかな色鉛筆。不思議な高揚感を抱いた。ふいに視界を掠めた写真。天の川の写真だった。とても綺麗だった。それなのになぜか切なくて涙が流れてきた。美しくて絶対にそこにはあるのにどうしても触れることができないもの。欲しいと思えば思うほど胸が張り裂ける思いがする。写真を撮った生徒の名前を見てみるといろんな人に有名な先輩だった。儚いのに爽やかで、才能があるのにおしとやかだという噂の耳の聞こえない木倉夢斗先輩。その日の夜は天の川の音がした。気がした。

夢斗の世界〜手に入ればいいのに〜
昼休み、いつものように美術室へお弁当を持っていく。人がいない上に見える空が彩がたくさんあるからだ。美術室に向かっている廊下に1枚の紙が落ちていた。手に取り、開いてみる。音楽記号が鮮やかな夕焼けに溶け込んでいるような絵。ただのノートの端の落書きのはずなのに踊っているような気がする。目の前に消しゴムが落ちていた。名前は書いていなかったが変わりに音符と羽が書いてあった。我に返り、消しゴムを拾う。美術室のドアの前で足が止まった。いつも人がいない場所に一人の女子生徒が自分の撮った写真の前に佇んでいた。いつの間にかカメラを向けていた。今、それを撮らなければ全てが消えてしまいそうな気がして。シャッターを切る。何かが足りない。彩が足りていなかった。それなのにどうして僕はシャッターを切ったのだろう。その日の夜、「今日の僕」が見つけられた彩を全て忘れてしまうほどに彼女のことを考えていた。彩をも超越した彼女のことを。