それからどれだけ時間が経ったのか、日奈子は夢を見ていた。
皇牙と二人きりで小樽に寿司を食べに行く夢だった。
行く時は当たり前に綾人やD4も一緒だと思っていたのに、夢の中では二人きりで、カウンター席に並んで寿司が出てくるのを待つ。
皇牙はいつも通り優しくて、「なんでも好きなものを頼め」と言ってくれる。
そう言われても「大トロ、エンガワ、ボタンエビ、アワビ、ウニ」なんて……高い物ばかり頼むのはよくないなと思い、「マグロの赤身を」と遠慮する自分がいた。
皇牙は「脂が乗ってるのが好きなんだろ?」と日奈子の好みを見抜いている。
女の子なのに脂が乗っている寿司ネタを好むなんて可愛くないよね……と日奈子は縮こまりながら、それでも「はい……好きです」と正直に答えた。
皇牙は笑って、「正直でよろしい。俺も好きだ」と言ってくれる。
なんだかいい匂いのする夢だった。お香のような和の香りが漂う。
それは皇牙が普段まとっている匂いとは違うけれど、これはこれで好きだな……と、そう思える品のよい香りだった。
「──ぅ、っ」
いい夢を見たわりには頭が重く、憂鬱な目覚めになる。
最初に目にしたのは木の格天井で、明らかに和の雰囲気だった。
横を見ると布団と畳が見える。鏡台もあった。なぜか和室に寝ている。
「……えっ?」と声を漏らしながら起き上がった日奈子は、自分の胸元を見下ろして目を疑った。
皇牙が竜王百貨店の外商を呼んで買ってくれたワンピースを着ていたはずなのに、和服に変わっている。桃色を基調とした豪華な振袖を着ていた。
日奈子は夢でも見ているのかと思いながら、状況把握に努める。
自分が寝ていた部屋は最初の印象通り和室だったが、ただの和室ではなかった。
一面が黒く太い格子になっている。
最初はどういうことかよくわからなかったが、少し遅れて座敷牢という言葉が頭に浮かんだ。
