気づけば唇を重ねていて、尊いものに触れた感覚に陥った。
頭ではまずいと思っているのに、そうせずにはいられなかったあの衝動──あれはやはり、心の事故なのかもしれない。
日奈子と自分の間にある信頼関係が、本意ではなかった方向に揺らいでいる。
日奈子の手や腕を傷つけてしまったことに酷く胸が痛むのも、今こうして日奈子のことを思いだすだけで胸が締めつけられるのも、その揺らぎのせいだ。
──主と、特別な生餌……異性であろうとあくまでも主従関係として、一生上手くやっていきたかったのに……。
これから先のことを考えると、いつになく不安になる。
急に冷たくしたり距離を取ったりするのは誤りだとわかっているので、あくまでも生餌として大事にして、今後も甘やかしたいと思っている。
しかしまたあんなふうにキスがしたいと思ったとき、衝動を抑えられるだろうか。
自分をコントロールして、いつもの竜王院皇牙らしくいられるだろうか──。
