「子供の頃、両親が望む早さで恐竜化できなくて、いつになったら変容できるのかと責められた。両親は俺に期待してたし、いつまでも恐竜になれない俺に苛立っていた。それで、『極限状態に陥ればできるかもしれない』と言われ……」
暗闇の中にいた時と同じように苦しげな皇牙は、日奈子の手を握りながら深呼吸を繰り返す。
息を整えて日奈子の顔を見上げ、再び口を開いた。
「エレベーターと同じくらいの広さのコンテナに、閉じ込められた。真っ暗で、声が反響して……誰も助けにこなくて、けど……恐竜化してコンテナを壊すこともできず、そのまま三日間放置されて……死に掛けた」
「──っ、酷い……そんな……そんなの、あまりに酷いです」
「母親は『ここまでやっても変容できないなんて、私の子じゃないみたい』と罵り、父親は『私の子でもない。期待外れだ』と詰った。やっと光のあるところに出られた時に掛けられた言葉を、今でも忘れない」
「……なんてことを……っ」
日奈子は皇牙の手を強く握り返しながら、自分が受けた母親の言葉を思い返した。
聞こえてしまう心の中の言葉だけではなく、口に出して直接「あんたみたいな子、自分の子供じゃなかったら大っ嫌い」と言われたことがある。
ナイフで滅多刺しにされたように心が痛かったのを覚えている。
それでも物理的な虐待を受けることはなかったが、皇牙は違うのだ。
死に掛けるほどの虐待を受けたうえに、両親から心ない言葉で詰られた。
その時の絶望を思いだすのなら、暗闇など絶対に避けて生きてほしいと思う。
もう思いださないでほしい。
そんなつらい過去は忘れて、大スターの竜王院皇牙でいてほしい。
もしも苦しい時は、どんなことでも聞くから。
自分なんかでよければ、いくらでも話を聞くから、彼らしい彼でいてほしい。
皇牙らしい皇牙を守りたい。
「どんな理由があるにせよ、お前を傷つけていいわけじゃない。本当に悪かった」
「皇牙さん……」
腕に巻かれた包帯を気にしながら謝罪する皇牙に、日奈子は首を横に振る。
皇牙は罪悪感に駆られているのかもしれないが、日奈子からしてみれば彼を守れてよかったと思っている。
