顔が汗だくになっていて、息をするのも苦しい様子だ。
「日奈子……っ、俺のせいで怪我を……」
「大したことありません。皇牙さんは? 怪我しませんでしたか?」
「──俺のことなんて……」
皇牙は深い溜め息をつき、「すまない、念動力が暴走して……」と謝罪する。
正常な呼吸ができるようになっていたが、今もまだ日奈子に縋っていた。
その時ようやくエレベーター内に光が戻り、停まっていた籠が動きだす。
皇牙は慌てて立ち上がると汗を拭った。深呼吸して呼吸を整える。
「日奈子、このことは……誰にも言わないでくれ」
暗闇に何かトラウマがあるらしい皇牙に、日奈子は「はい、もちろんです」と答え、それだけでは不安かと思ったので「口が裂けても言いません」と約束する。
エレベーターは三階で停止し、扉は何事もなかったかのように開いた。
「皇牙様! 日奈子ちゃん!」
「ちょ……っ、血が! どうしたんですか!?」
「うわ、鏡割れてるし! お二人共、大丈夫ですか!?」
「停電の間に何があったんですか!? いや、とにかく手当てを!」
三階ではD4が待っていて、エレベーター内の惨状にびっくりしている。
日奈子は余計なことは言わず、皇牙の答えに従うつもりだった。
皇牙はいつもの堂々とした態度で、「驚いただけだ」と答える。
「驚いたら力を使ってしまって、鏡が割れた」と説明した。
「ええぇー、日奈子ちゃん怪我してますよ!」
「皇牙様は!? 怪我しませんでした!?」
「俺は平気だが日奈子に怪我をさせた。手当てするから救急箱を持ってきてくれ」
皇牙はさらりと命じると、血のついた日奈子の手を握った。
そのまま日奈子の部屋に向かい、D4が用意してくれた救急箱を使って皇牙自らが手当てをする。D4は自分達がやりますと言ったが、皇牙は「俺がやりたいんだ」と言って人払いした。
