「皇牙さん、もうこんなに明るいですよ。大丈夫、すぐにもっと明るくなりますよ」
「──ッ、ゥ、ウアアァァァ──ッ!!」
「……っ、ぁ」
彼が爆発するように叫んだ直後、ピシッと何かが割れる音がする。
振り返ると奥全面の鏡に亀裂が走っていた。
「危ない!」
バリンと鏡が割れて、大小様々な破片が落ちてくる。
日奈子は咄嗟に皇牙を庇い、雪崩のような破片を利き手で受けた。
腕が痛くなり血が出ているのがわかったが、それでも皇牙を庇いながら、「大丈夫、大丈夫ですよ」と声を掛け続ける。
何もかも完璧な皇牙の中に子供のように臆病な一面を見つけ、いささか動揺したが、今はとにかく彼を落ち着かせるのが先だ。
「一人じゃないです。私、ここにいますからね。一緒にいますからね」
一人じゃないことを彼が認識できるよう、少し強めに背中をさする。
「大丈夫、大丈夫」と声を掛けながらも、大きな声を出さないよう意識した。
「……ハッ、ハ……ァ」
皇牙は今も苦しそうだったが、呼吸の乱れが少しずつ治っていく。
日奈子は皇牙の手にスマートフォンを持たせて、そっと手を握った。
「だいぶ明るくなりましたよ。もうすぐもっと明るくなります。大丈夫です」
「──日奈子……っ」
ようやく少し落ち着いたのか、皇牙が正気の世界に戻ってくる。
けれどもまだ不安なようだった。強い力で縋りつかれる。
「日奈子、日奈子……」
「はい。皇牙さん、私はここにいます。一人じゃないから大丈夫ですよ」
日奈子は皇牙の頭を抱き締めながら、「大丈夫、大丈夫です」と、なるべく優しい声音を意識して話し掛ける。
あちこち傷ついて痛かったが、今はとにかく彼を安心させたかった。
皇牙は日奈子に縋りつきながら、徐々に落ち着きを取り戻していく。
普段の余裕ある彼とはまったく違っていた。
