何より皇牙が一緒にいるので、どんなトラブルが起きても平気な気がする。
彼はスマートフォンを持っているだろうか。
まずは明かりが欲しいが、どうだろう。
「皇牙さん、あの……」
「──ッ、ゥ」
「皇牙さん?」
スマホ持ってますか──そう訊こうとした時、どさっと鈍い音がした。
皇牙がしゃがんだような気がして、日奈子は闇の中で目を凝らす。
「──ッ、ハ……ハァ……ハ……ッ!」
皇牙の息が荒い。浅く速い呼吸音が聞こえてくる。
何か普通ではない、よくないことが起きている気がした。
「皇牙さんっ、どうしましたか!? 大丈夫ですか!?」
「ハッ……ハ……ハッ……ハァ……ッ!」
日奈子は皇牙の背中に触れたが、問いに対する返事は得られなかった。
皇牙は異常な喘鳴を繰り返し、体を丸めて苦しげに震えている。
背中をさすったが効果はなく、過呼吸を起こしているようだった。
そんな皇牙の隣で、日奈子は自分がなんとかしなければと気を引き締める。
「皇牙さんっ、スマホ持ってますか!? ポケット探りますね!」
真っ暗闇の中で、日奈子は彼が穿いているパンツに触れた。
幸いスマートフォンはすぐに見つかり、ログイン画面を表示できる。
エレベーター内は俄かに明るくなって、皇牙の顔が見えるようになった。
苦悶の表情を浮かべる彼は、相変わらず「ハ……ッ、ハ……」と呼吸が荒い。
「皇牙さんっ、だいぶ明るくなりましたよ! 大丈夫ですよ!」
この人は暗闇が苦手なのだと判断した日奈子は、スマートフォンのログイン画面をスライドしてライトをオンにする。ログインせずともライトが点いて、エレベーター内はさらに明るくなった。
しかし皇牙の喘鳴はやまず、それどころか震えが酷くなっていく。
