血を吸う前からすでに光り輝く皇牙を見て、胸の辺りが引き締まる。
少しの苦しさを感じながら、日奈子は差しだされた手に向かって真っ直ぐ歩いた。
前回は触れていいのかわからない気持ちでおずおずと手を伸ばしたけれど、今夜は躊躇いなく彼の手を取った。
「日奈子、今夜のドレスもよく似合う。とても魅力的だ」
「──ぁ……」
魅力的なんて縁遠い言葉を向けられて、お世辞だと思いつつも照れてしまう。
ありがとうございます──そう言いたいのに、上手く言葉にならなかった。
少し遅れてもう片方の手まで差しだされ、皇牙に両手を預ける形になる。
片手だけの時よりも距離が縮まった気がして、やはりドキドキした。
「日奈子、この一ヵ月間、俺に尽くしてくれてありがとう。今ここにある俺の体は、日奈子の血と、日奈子が作った食事で出来てる。お前は俺の血肉になってるんだ」
「血肉に……」
ああ、そう言われてみると本当にそうだ──毎日作る食事や、与えた血液が皇牙の血となり肉となり、今ここにいる彼を形作っている。
まったくの他人だった前回の儀式と、今夜の儀式は違うのだ。
自分は少なからず皇牙に影響を与えている。それは間違いない。
──他人じゃない。主従関係ではあるけれど、他人じゃないんだ。
そう考えると嬉しくて胸がいっぱいになり、涙腺が緩んでしまった。
儀式の前に泣いたら駄目だと思ってこらえたけれど、遅れて口にした「ありがとうございます」という言葉が震え、涙声になってしまう。
「泣く奴があるか」
以前と同じことをまた言われ、くすっと笑われた。
一粒零してしまった涙を拭こうにも、両手を預けているので動けない。
すると皇牙の顔が迫ってきて、目尻にそっと唇を当てられた。
涙を吸い取られるのがわかる。
皇牙の唇の柔らかさ、温かさを感じる。
