一度は瘦せ細って姿を消した月が膨らみ、再び満月の日がやって来た。
この一ヵ月間、日奈子は休まず登校してオンライン授業を受けている。
帰宅後は皇牙と綾人のために夕食を作り、暇な時は親友のルナとスマートフォンでやり取りしたり、D4の四人と一緒に竜王スタジアムに行って、皇牙や綾人の試合を観戦したりと、楽しい日々を過ごしていた。
今日も平常通り登校しているが、さすがに今夜の儀式のことが気になってしまい、授業に集中できない。
今夜はどのドレスを着てどの靴を履いて行くか、ジュエリーは何を身に着けるかといった楽しい悩みもあるけれど、皇牙にまた血を吸われることを考えると今から気が重かった。
──首筋の薔薇みたいな痕……あれがまたつくんだ。
皇牙の唇が自分の肌に触れる瞬間を思い返すと、どうしても胸が高鳴ってしまう。
今夜もまた、指先にキスをされたりするだろうか。
それはしないとしても、首筋には確実にキスをされるのだ。
キスだなんて思ってはいけないけれど、ついそう思ってしまう。
吸血にときめかないのは難しく、皇牙のことを意識しないのも難しい。
そういう意味で皇牙に惹かれてはいけないのに、身のほどを弁えなければせっかく手に入れた幸せが壊れてしまうかもしれないのに、どうしたって惹かれてしまう。
──駄目……楽しいことだけ考えよう。吸血の瞬間のことは考えない。私はただの生餌、栄養剤みたいなもの。今夜着るドレスのことだけ考える。
蘇る記憶を……吸血後の皇牙の艶っぽさを忘れようとして、日奈子はドレスの色や形を思い描いた。
今日は元気な印象になるレモン色のドレスか、五月らしい水色のドレスにしようと決めると、六限目の終わりを告げるチャイムが鳴る。
授業に集中できなかったことに罪悪感を覚えながらテキストを閉じた時、日奈子が使っている個室にノックが響いた。
「桃井日奈子さん、お客様がいらしてますよ」
教務課の女性の言葉に、日奈子はたちまち嫌な予感を覚える。
自分を訪ねてくる人など、連絡を絶った両親や妹しか思いつかない。
ルナだったらこれ以上なく嬉しいけれど、ルナは突然来たりは絶対しない。
「妹さんだそうです。外来用のカフェテリアでお待ちです」
「──はい……ありがとうございます」
この一ヵ月間、日奈子は休まず登校してオンライン授業を受けている。
帰宅後は皇牙と綾人のために夕食を作り、暇な時は親友のルナとスマートフォンでやり取りしたり、D4の四人と一緒に竜王スタジアムに行って、皇牙や綾人の試合を観戦したりと、楽しい日々を過ごしていた。
今日も平常通り登校しているが、さすがに今夜の儀式のことが気になってしまい、授業に集中できない。
今夜はどのドレスを着てどの靴を履いて行くか、ジュエリーは何を身に着けるかといった楽しい悩みもあるけれど、皇牙にまた血を吸われることを考えると今から気が重かった。
──首筋の薔薇みたいな痕……あれがまたつくんだ。
皇牙の唇が自分の肌に触れる瞬間を思い返すと、どうしても胸が高鳴ってしまう。
今夜もまた、指先にキスをされたりするだろうか。
それはしないとしても、首筋には確実にキスをされるのだ。
キスだなんて思ってはいけないけれど、ついそう思ってしまう。
吸血にときめかないのは難しく、皇牙のことを意識しないのも難しい。
そういう意味で皇牙に惹かれてはいけないのに、身のほどを弁えなければせっかく手に入れた幸せが壊れてしまうかもしれないのに、どうしたって惹かれてしまう。
──駄目……楽しいことだけ考えよう。吸血の瞬間のことは考えない。私はただの生餌、栄養剤みたいなもの。今夜着るドレスのことだけ考える。
蘇る記憶を……吸血後の皇牙の艶っぽさを忘れようとして、日奈子はドレスの色や形を思い描いた。
今日は元気な印象になるレモン色のドレスか、五月らしい水色のドレスにしようと決めると、六限目の終わりを告げるチャイムが鳴る。
授業に集中できなかったことに罪悪感を覚えながらテキストを閉じた時、日奈子が使っている個室にノックが響いた。
「桃井日奈子さん、お客様がいらしてますよ」
教務課の女性の言葉に、日奈子はたちまち嫌な予感を覚える。
自分を訪ねてくる人など、連絡を絶った両親や妹しか思いつかない。
ルナだったらこれ以上なく嬉しいけれど、ルナは突然来たりは絶対しない。
「妹さんだそうです。外来用のカフェテリアでお待ちです」
「──はい……ありがとうございます」
