「はい、日奈子です。皇牙さん?」
『ああ、俺だ。試合観てくれたか?』
「はい、もちろん観てました。おめでとうございます!」
『九州の王者を相手に、ほぼ無傷で勝ったぞ』
「さすがです、本当にお疲れ様でした。凄く強くてカッコよくて、私……恐竜を見て初めてカッコイイって思いました」
『それはよかった。お前の初めては全部俺がいただく』
「……え? あ、はい」
『とにかくお前のおかげだ。お弁当、美味しかった。また作ってくれ』
「はい!」
皇牙との短い通話を終えると、綾人とD4がにんまりしながらこちらを見ていた。
皇牙の声は聞こえていないはずだが、「ラブラブじゃーん」とD4に揶揄われる。
綾人まで一緒になって、「ラブラブですね」と口角を上げた。
「え、ラブラブ? そんなっ、とんでもないです。お弁当のお礼に掛けてくれただけですよ」
「日奈子さん、試合後の選手ってかなり忙しいんですよ。電話一本掛ける余裕もないくらい忙しいんです。それなのにわざわざ……」
「日奈子ちゃん、皇牙様のお気に入りだから」
「いえいえ、そんな……」
日奈子は焦って恐縮したが、皇牙のお気に入りと言われると嬉しかった。
数百万人に一人の美味しい血の持ち主であることや、料理の腕を評価してもらえただけだということは重々わかっている。
それでも、ただそれだけでも、皇牙に大切に扱ってもらえることが嬉しくてたまらなかった。
日奈子は赤羽に肘でつつかれながら、「ほっぺ赤くなってるよー」と茶化される。
「なってません」
「なってるよー」
赤羽の指摘を否定しつつも、顔や体が熱くなっている気はしていた。
試合で興奮していたところに電話が掛かってきてさらに興奮し、小汗をかいている自覚もある。
嬉しいということは、こんなに熱くなることなのだ。
なんだか恥ずかしいが、この熱はとても気持ちがいい。
