恐竜王の花嫁


「皇牙様、興行的なこと考えて試合時間引き延ばしてましたねー」
 赤羽が拍手をしながら笑い、D4の残る三人もうんうんと首を縦に振る。
 日奈子にはその辺りがまったくわからなかったので、見る目のある彼らに感心した。
 自分も試合をたくさん観れば目が肥えていくだろうか。皇牙がどの程度本気なのか、見極められるくらい観ていきたいと思った。
「あ、ヒーローインタビュー始まるよ」
 試合のリプレイ画面が終わり、人の姿に戻って服を着た皇牙が映しだされる。
 男性インタビュアーが「今夜の相手は九州の王者でしたが、いかがでしたか?」とマイクを向けると、皇牙はカメラに視線を向けた。
「手強い相手ではあったが、俺の敵じゃない。もう少し体を作って出直すんだな」
 普段の皇牙とはまるで違う不遜な態度に、日奈子はつい身をすくめてしまう。
 彼が俺様クールキャラなのはルナから聞いていたし、雑誌などを見て知っていた。
 しかしリアルタイムでこういった発言を聞くと、さすがに少しびっくりする。なかなかの衝撃だった。
「雑誌とか読んだので知ってはいましたけど、本当に俺様クールキャラなんですね。普段の皇牙さんとは全然違いますね」
「キャラというか、あれはあれで皇牙様の真実ですよ」
「真実……」
「日奈子さんを気に入っていて、紳士的で優しいのも真実ですけどね」
 笑みを含んだ綾人の言葉に、日奈子は自分が知っている皇牙を思い返す。
 皇牙にはダイナ・リーグ・ジャパンの副社長としての顔や現役大学生としての顔、選手としての顔、モデルとしての顔など様々な顔があり……役割によって見せる顔が違うのだと思った。どれが本物でどれが嘘というわけではなく、彼の多面性なのかもしれない。
 ヒーローインタビューが終わると、再びリプレイ画面が表示された。
 日奈子は勝負を分けた瞬間を真剣に見ていたが、そうしているとスマートフォンが震えだす。
 誰も掛けてくる人などいないのにと思いながら見てみると、画面には皇牙の写真と『皇牙さん』の文字が表示されていた。
「……あ、皇牙さんからですっ」
 試合が終わったばかりなのに、どうしたんだろうと思った。
 驚いたのは日奈子だけではなく、綾人もD4も「えっ!?」と声を上げる。
 日奈子は少しおたおたしながらスライドボタンを操作し、通話を開始した。