恐竜王の花嫁




 キャンピングカーは竜王スタジアムに到着し、日奈子は車から降りるなり気持ちを切り替える。
 指折り数えて待っていた今日という日を、目いっぱい楽しむことに決めた。
 初めて皇牙の変容を見ると思うと胸がドキドキしたが、まずは食べ物と飲み物だ。
 売店に行ってどんなものが売られているのか見てみたかったので、買い出し担当の緑木と黄山と一緒に買い物に行く。
 VIPフロアにはフランス料理と寿司とヴィーガン食の注文カウンターがあるが、人で賑わっているのはB級グルメだった。
 裕福な人もスタジアムならではものが食べたいらしい。
 日奈子は恐竜の焼き印が捺されたアメリカンドッグと、緑と赤のグラデーションが美しい特製ソーダ『ジャングル・サバイバル・スカッシュ』を購入した。
 綾人のリクエストの『エイペックス・ブルー・フローズン』という青いドリンクと、肉がはみ出た『ギガ・バイト・T・レックスバーガー』も購入し、トレイに並べる。
 飲食物の売店以外もちらりと覗いてみたが、グッズがたくさんあって目が回りそうだった。
 皇牙の名前が入ったタオルやマグカップ、写真集やポスターの他に、肉食や草食を問わず様々な恐竜のぬいぐるみやフィギュアが売られている。
 綾人の名前が入った商品もあり、彼が皇牙の秘書であるのと同時に、スター選手の一人であることを実感した。
 日奈子が綾人と自分の分の飲食物を持って席に戻ろうとすると、スタッフの女性がさっと歩み寄ってくる。
「お運びいたします」と言って、両手が塞がっていた日奈子の手助けをしてくれた。
 VIPフロアは売店も空いているし、至れり尽くせりだなと思いながら席に着く。
 皇牙の前の前の試合が始まるところで、スタジアムは熱気に包まれていた。
「日奈子さん、買い物ありがとうございます」
「いえいえ、これで合ってますか?」
「バッチリです。これ美味しいんですよ、『ギガ・バイト・T・レックスバーガー』」
「綾人さんは牛肉が大好きですもんね」
「はい。塊が一番好きなんですけど、ミンチも相当好きです」
 見た目はクールな綾人とふふふと笑い合いながら、日奈子は試合を観戦する。