「皇牙さんってお母さん似なんですね。お母さん凄く若く見えるし、姉と弟みたい」
日奈子が何気なく言うと、車内に奇妙な沈黙が広がった。
なぜか誰も「そうだねー」と乗ってきてくれないが、自分がおかしなことを言っているとも思えない。皇牙はどう見ても母親似だ。
「日奈子ちゃん、それ皇牙様には言わないほうがいいよ」
「……え?」
「竜王院ファミリーとか呼ばれて三人まとめて人気だったり、一緒に撮影したりすることもあるけど、実は親子仲最悪なんで」
「あ……そうですね、親子仲がよくないとは聞いています。似てるとか言われたら、皇牙さん不愉快ですよね」
「事実は事実だけど、触れちゃいけない感じ」
日奈子は忠告してくれた赤羽と青沼に感謝しながら、重要な注意事項として自分の頭に刻みつける。
「私の親友が竜王院ファミリーのファンなので、皇牙さんと御両親のことは少しだけ知っていたんです。親友は、家族仲がよくないことを知らないんでしょうね」
「そうだと思う。あのファミリーはなんというか、ビジネス家族……みたいな感じで、必要な時だけ集まって表面上は上手くやってるように見せかけてるから」
「そうだったんですか……」
日奈子は自分の家族のことを思いだしながら、複雑な気持ちになる。
両親共に見栄っ張りだったので、何年かに一度は写真館で家族写真を撮っていた。
日奈子の服はすべて結衣花のお下がりだったが、それなりにいい服を着て、母親と結衣花に至っては美容院に行ってから撮影していたのを憶えている。
それらは洒落た写真立てに入れられて、リビングや玄関に飾られていた。
はたから見れば、ほどほど余裕のある仲よし家族に見えただろう。
写真立てに埃がつかないよう小まめに掃除するのが日奈子の役目だったが、そんなことは誰も知らない。
日奈子は竜王院ファミリーの不仲について、皇牙本人はもちろん、ルナにも余計なことは言わないと心に決めた。触れたところで誰も得をしない、悲しい真実だ。
