恐竜王の花嫁


 日奈子は皇牙の正面に座り、神妙な気持ちで二人を見守った。
 バターの香り豊かな鶏モモ肉とブロッコリーのクリーム煮を一口、二口、三口……ぺろりと食べた皇牙は、ふうと満足げな吐息を漏らす。
「旨い。スープも肉も旨いし、ブロッコリーの硬さもちょうどよくて食べやすい」
「本当に美味しいですね。和洋中が揃っていて、見ているだけでワクワクします」
「ありがとうございます。お二人の好みを聞いていなかったので……とりあえずいろいろ作ってみました。地味な家庭料理ばかりだとあれなので、サラダは少しお洒落なものを……」
「日奈子さん、このじゃがいもと豚肉の味噌煮、凄く美味しいです。ご飯が進むし、ちょうどいい塩加減で芋の優しい味が染み渡ります。何より肉の旨味がよく出ていて柔らかい。試合帰りの体に染み渡るようです」
「そうだな、味噌煮も旨い。ミートボールの餡掛けも楽しみだ」
 旨い、美味しい──そう言ってもりもりと食べてくれる二人を前に、日奈子は箸を手にしたまま動けなくなる。
 家族と一緒に食べている時、「美味しい?」と訊きたくなることはあった。
 ろくな答えが返ってこない気がしたし、自分はいつも会話に入れなかったので訊くことはなかったが、いつだって「美味しい」の一言を求めていた。
 それが今はこんなに何度も、数えていられないほどたくさん与えてもらえる。
 食事をすることに真っ直ぐで、料理にちゃんと集中してくれて、嬉しい感想を言いながら食べてもらえるなんて……幸せ過ぎて頭がどうかしてしまいそうだ。
「……よかった。お口に合って本当に、よかった」
「お、アボカドのチーズ焼きも旨い。これは酒にも合いそうだな」
「ええ本当に。黒トリュフ入りの岩塩が効いていて香り高くお洒落ですね。チーズはカチョカバロかな? このもっちりとした食感、大好きなんですよ」
「俺も好きだ。これはカロリー気にせず二個でも三個でもいけそうだな」
「さすがに太りますよ、アボカドは脂肪の塊ですから」
「筋トレを増やせばいいだろう」
「一緒に運動しますか?」
「まず怪我を治せ」