目の虹彩の赤い色も、太陽の光を受けて際立っている。
こんなに美しい人に血を吸われたんだと思うと、昨夜の出来事が恥ずかしくて居た堪れなくなった。
指先や首筋に唇を押し当てられたことを、どうしたって忘れられない。
皇牙にとっては食事の一環に過ぎないだろうが、自分にとってはキスだった。
「今日は一日中保健室にいたそうだな」
「──っ、すみません」
「なぜ謝るんだ? ネガティブな心の声が聞こえるなら、教室になんてとてもいられないよな。明日からは個室でオンライン授業を受けられるよう手配してある」
「オンライン授業、ですか?」
「ああ、今日には間に合わなくて悪かったな……オンライン授業の準備が整うまでは休ませるべきだった。俺のミスだ。つらかっただろう?」
「……っ、いえ、あの、ちょっとだけ……」
ちょっとどころではない衝撃を思い返しそうになった日奈子は、首を左右にぶんと振る。
記憶の底から湧き上がる呪いの言葉を無理やり封じて笑顔を作り、隣を歩く皇牙の顔を見上げた。
「皇牙さん、あの……もしよかったら、もし……迷惑じゃなければ、なんですけど、夕食とか作っても構いませんか?」
「──夕食? 俺の?」
「はい。私、これといって得意なこともない平々凡々な人間ですけど、家庭料理なら少しはできるというか、それしかできないので、ちょっとでも恩返しできたらなって思ったんです」
「なるほど」
皇牙はすぐに返事をせず、寮に向かって歩きながら少し考える素振りを見せる。
その間に日奈子の血の気は急速に下がり、自分がとんでもなく烏滸がましいことを言ってしまったことに気づいた。
考えてみたら彼は竜王グループの御曹司だ。
口にする物は厳選されていて、きっと一流シェフがついている。
素人の小娘の作った家庭料理など口に合うわけがない。
きっとどう断るか考えているに違いなかった。
