恐竜王の花嫁

 放課後になり、日奈子は担任の安住に挨拶をして校舎をあとにする。
 すれ違う女生徒から再び悪意を向けられたが、聞こえない振りをして敷地内にある売店に向かった。
 D4が売店と呼んでいたのは竜王マーケットのことで、三階建ての建物だった。
 文房具売り場が充実した書店や、ドラッグストア、スーパーなどが入っている。
 日奈子は肉や野菜を選び、無意識に四人分の量を籠に入れていた。
 常に四人分作ってきたので、一人分だけ買うという感覚がない。
 ──迷惑かもしれないけど、皇牙さんの夕飯……作ろうかな。そのくらいしないと罰が当たりそうっていうか、できれば毎日少しでも役に立ちたい。四週間に一回しか仕事しないで、あんなに至れり尽くせりなんて申し訳ないし……。
 残った分は明日以降に食べることにして、ひとまず四人分作ることに決める。
 最初に食べてもらう料理は特に美味しくなければいけないので、鶏モモ肉とブロッコリーのクリーム煮を作ることにした。家族は誰も「美味しい」とは言わなかったが、結衣花から何度もリクエストがあった料理だ。
 結衣花のために作るのは癪だったけれど、皇牙のためと思うと材料を選ぶことすら楽しくなる。
 日奈子は状態のいい鶏モモ肉を選び、タマネギやブロッコリー、基本の調味料など、籠いっぱいに商品を入れた。
 テキストが入った学生鞄も持っていたので、一度に買い揃えるのは無謀だったなと後悔したが、会計を済ませた以上は持ち帰るしかない。
 ──うわ、腕が抜けそう!
 なんとか外に出るものの瓶類があまりに重くて、これは二回に分けないと無理かもしれない……と焦ったところで、ふわっと腕が楽になる。
 何かと思えば隣に背の高い人物がいて、重いほうの荷物を持ってくれていた。
 それも明るい髪色をした、抜群にスタイルのいい男性だ。
 脚がすらりと長く、伸びる影まで美しい。
「えっ……えぇ、皇牙さん!?」
「おかえり日奈子」
「ど、どうしたんですか、こんなところでっ」
「そろそろここに来ると思ったんだ。日奈子、お前は昨日血を抜かれたばかりなんだ。あまり無理をするなよ」
 信じられないことに隣にいたのは皇牙で、重いはずの袋を軽そうに持っている。
 午後の日射しの下で見ると、髪色が一層明るく見えた。髪型も服も垢抜けていて、彼の周りだけきらきらと光り輝いているようだ。