養護教諭がおにぎりを買ってきてくれたので、日奈子は保健室で昼食を摂る。
鞄からスマートフォンを取りだすと、親友のルナからメッセージが届いていた。
『転校したって聞いたけど、どういうこと!?』
ルナが驚くのは当然で、日奈子は昨日まで通っていた学校のことを思い返す。
毎日クラスメイトの誰かしらが、呪いの言葉のように強くネガティブな念を放っていたものの……その先にいるのは自分ではなかったので、今よりはましだった。
この学校で受ける声は、ただのノイズでは済まされない。
身の危険を感じるほどの悪意だ。殺意と言っても過言ではない。
ルナがいないという事実も大きく、今すぐにでも会いたい気持ちだった。
『急な話で相談もできなくてごめんね。竜人遺伝子の検査を受けて、先祖返りだってことがわかったの。竜人としての身分証明書を発行してもらって、竜王院皇牙さんの生餌になったの』
ルナにメッセージを送ると、すぐに既読マークがつく。
ルナは皇牙と彼の両親のファンだが、ルナなら嫉妬などしないと思った。
たぶん、『羨ましい』とすら言わないだろう。ただただ心配してくれる気がした。
『マジで!? そんなことあるの!? ちゃんと無事でいる!? 大丈夫!?』
『心配してくれてありがとう。びっくりさせてごめんね。私は大丈夫。皇牙さんにも他の生餌の人達にも親切にしてもらってるよ』
『ほんとにほんと!? 皇牙くんは俺様系のクールキャラだよ! 親切とか言われても信じられないよ!』
『大丈夫、本当によくしてもらってる』
普段はスタンプをつけてやり取りするのに、今日はお互いにスタンプなどは使わず、文字だけで会話をした。
ルナのアイコンとルナが打ち込んだ文字を見ているだけで、涙が滲みそうになる。
ルナも竜人だったらいいのにと思った。
結衣花がいる前の学校に戻りたいとは思わないけれど、ルナの近くにいたい。
ここでは友達なんて一人も作れそうにないし、もしできたところでルナの代わりは誰にも務まらない。
『落ち着いたら電話するね』
