『コイツがアタヴィズム!? 皇牙様の生餌!? あり得ない!』
『うっわ最悪! こんなブスに出し抜かれたのかよ! 死ねばいいのに!』
脳内で無数の声が絡まり、最早すべて聞き取るのは不可能だったが……悪意の波は確実に日奈子に届いた。
表面的には誰も何も言わず、安住は「君の席はここだよ」と、一番後ろの席を指し示している。丁寧に椅子まで引いてくれたが、日奈子は座れなかった。
『ブス、死ね! 死ね!』
『とっとと帰れよ! 学校来んな!』
『こんな女に皇牙様を奪られるなんて、絶対許せない!』
頭と肩に重い石でも乗せられたように、ずしんと頭痛がやって来る。
これまで誰にも羨ましがられることなく生きてきた日奈子にとって、初めて受ける妬心は強烈なものだった。
席に着くことなどとてもできず、とにかくこの場から去りたくて後退してしまう。
とんと安住に体がぶつかり、「桃井さん? どうかした?」と優しく訊かれた。
日奈子は縋るような思いで安住を見上げ、「すみません」と声を振り絞る。
「──ぁ、頭が痛い……ので、保健室に、行かせてください」
新しい学校で心機一転頑張ろうと思ったのに、無理だった。
転校初日から保健室に逃げ込む自分は、以前と何も変わっていない。
むしろ以前より酷い。悪意ある罵詈雑言が他ならぬ自分に向かってくるのだから、どうしたって耐えられない。聞こえない振りなんてできない。
こんな悪意まみれの教室には、一分だっていられなかった。
安住と一緒に一階の保健室に行くと、白衣を着た女性の養護教諭が迎えてくれる。
前の学校では保健室に行くたびに「またか」という迷惑そうな顔をされていたので、日奈子は鬱々としながら行ったのだが、なぜか「いらっしゃーい」と歓迎された。
安住が日奈子を預けて出ていくと、養護教諭は「来ると思ってたわー」と笑う。
「……え?」
