恐竜王の花嫁


 漆黒の瞳孔を囲む真紅の虹彩が、透き通るように明るく見えた。
 艶やかな肌は一層艶めいて、唇に至っては最早見つめていることができないくらい性的に感じられる。
「──なんて美味な血だ……体中が満たされる」
 そう零す声はしっとりと濡れ、やはりとてもエロティックに響いた。
 それでもなんとか、彼の言葉を頭で理解する。
 血を美味だと言われ、日奈子は心から安堵した。
 実際に吸ってみたら口に合わない……なんてことにならずに、気に入ってもらえて本当によかった。
 アタヴィズムの血を吸った皇牙の変化を……彼の全身が悦ぶ様を目の当たりにして、日奈子の体は芯から熱くなっていく。今になってすべてが恥ずかしくて、皇牙の顔をまともに見られなかった。
「日奈子、大丈夫か? ふらついたりしてないか?」
 皇牙に支えてもらいながら、日奈子は「はい、大丈夫です。ふらつきとか全然」とうつむき加減で答える。
 顔を上げたらルビーのような綺麗過ぎる目を至近距離で見ることになり、どうしていいかわからなくなりそうだった。
「最高の血をありがとう。お前が竜人で本当によかった」
「……はい」
「この出会いは運命だ」
「──っ」
 また運命という言葉を使われ、心臓を鷲づかみにされた心地になる。
 勘違いしてしまいそうになるから、そんな言葉は使わないでほしかった。
 自分は皇牙の生餌であって、D4の四人と変わらない立場だ。異性だからといって特別なわけじゃない。栄養剤みたいなもので、それ以上の存在ではあり得ない。
 恐る恐る顔を上げると、あまりにも綺麗な顔があって……真紅の双眸が真っ直ぐに自分を捉えていて、かあっと顔が熱くなった。
 舞い上がっちゃ駄目だと思うのに、勘違いしちゃ絶対駄目だと思うのに……コントロールできない血の巡りのように心が騒ぐ。
「アタヴィズムについて俺も詳しくないので調べてみたら、なんらかの能力を持っていることが多いと書いてあった」
「──能力、ですか?」
「竜人に多いのは念動力者で、俺もそのタイプだ。何か心当たりはないか? 感情が高ぶると近くにある物が動くとか、宙に浮けるとか、人の心が読めるとか」