これまで生きてきて一番の褒め言葉に、胸がじわりと熱くなった。
手を取るなんて烏滸がましいと思ったけれど、手を取らないという選択肢はなくて、
日奈子はおずおずと手を伸ばす。
触れ合うと引き寄せられ、そっと肩を抱かれた。
これまでにも何度か肩を抱かれたが……制服の上から触れられるのと、素肌を直接触れられるのとではだいぶ違う。一気に距離が縮まった気がして、熱くなった心臓がトクトクと騒ぎだした。
「寒くないか?」
「はい、今日は暖かいので大丈夫です」
「よかった。冷えるといけないから早く済ませよう」
「はい」
「先に断っておくが、吸血すると内出血の痕が残る。人間の場合は一週間以上残ると思う。制服を着れば見えないところを吸うが、痕が残っても構わないか?」
「大丈夫です。でも、内出血なんですか? 牙の痕とか残るのかと思いました」
「牙があるのは恐竜化した時だけだ。肉食の竜人は皮膚を傷つけずに血を吸い上げることができる。痛みはないから安心しろ」
「痛みくらいないと、申し訳ないです」
「面白いことを言うんだな」
皇牙はふっと笑って、日奈子の指に顔を近付ける。
ドレスアップしてもネイルは塗っていない素のままの爪に、彼の唇が触れた。
指先にキスをされているのだと認識すると、日奈子はどうしていいかわからなくて硬直してしまう。
もちろん嫌ではない。嫌悪感などまったくない。
ただ本当に、こういう時にどうしていいかわからなかった。
「あ、あの……っ、すみません、吸血の前に言っておきたいことが、あります」
指先へのキスを一旦なかったことにした日奈子は、皇牙に話すと決めていたことを口に上らせる。
吸血のあとでもいいが、こういうことは先に言うべきだと思った。
「お金の話ですみません……っ、あの、至れり尽くせりで申し訳ないので、百万円は受け取れません。学費と寮費と生活費を負担していただくだけで……っ、だけでって言うか、その時点ですでにいただき過ぎなので、本当にお金は要りません」
