人気モデルでもある皇牙はきっと目が肥えていて、スタイルのいい美女を見慣れているだろう。
私なんて幼児体型で色気もなくて、子供っぽく見えるかもしれない──そう思って気が重くなるのを、「でもレアな生餌だし!」と言い聞かせて自分を奮い立たせた。
モデル体型でもセクシー美女でもないけれど、アタヴィズムと呼ばれる数百万人に一人いるかいないかの先祖返りだ。それに栄養バランスを考えて健康的な食事をしてきたことには自信がある。自分はとびきり美味しい血の持ち主なのだと信じたい。
──よし!
D4に見送られ、日奈子は気合を入れてエレベーターに乗り込む。
正面は鏡になっていたので、深呼吸をしながら最終チェックをした。
エレベーターは静かに上がっていき、一つ上の屋上に到着する。
扉が開いたら皇牙がいるのかと思ったが、実際にはエレベーターホールがあって、屋上に出るにはもう一つ扉を開かなければならなかった。
気合を入れ直して先に進み、重厚な扉を開く。
外の風がふわりと流れ込んできた。
ドレス姿では寒いかと思ったが、春の夜風は心地好い。
満月と学園のライトアップのおかげで外は明るく、皇牙の姿がはっきりと見えた。
月を背負う立ち姿があまりにも綺麗で、つい見惚れてしまう。
モデルというだけあって、ただ立っているだけなのにシルエットが美しい。
たぶん何をやっても様になる人だ。ほとんどなんでも平均くらいの自分とは違い、煌びやかな世界の中で大スターとして生きている人だ。
本来なら、自分なんかが近付けない人。
テレビの向こう側にいる、別世界の人。
「お待たせしました」
夢なら覚めないでと願いながら、日奈子は皇牙に向かって歩いて行く。
彼もまた、こちらに向かって歩いてきた。
そして手を差し伸べてくれる。
「そのドレス、よく似合ってる。凄く綺麗だ」
