恐竜王の花嫁

 独りになったバスルームで、日奈子は思わず立ち尽くす。
 改めて見たバスルームはインテリア雑誌の表紙を飾ってもおかしくないほど綺麗で、実家の物とは似ても似つかない高級感に満ちていた。
 白大理石に囲まれた広い空間は、暖房を入れれば寒くないうえに、サウナのように熱くすることも可能らしい。
 ──凄い……これ、本当に私が一番に使っていいの?
 日奈子の部屋なのだから一番も二番もないのだけれど……一番風呂に入れることに感激してしまう。何しろ実家ではいつも三人のあとで、母親にお湯を抜かれることも頻繁にあった。
 冷え切った洗い場で震えながらシャワーを浴びていたことを考えると、贅沢過ぎて罰が当たりそうだ。ゆっくりでいいと言われたものの少しだけ急いだ日奈子は、なみなみと豊かな白い湯に浸かる。
 D4が用意してくれた入浴剤は、うっとりするほど上品な香りがした。
 シャンプーもトリートメントもボディソープもすべてがいい香りで、バスルームは夢のように心地好い空間になる。
 ──こんなに贅沢で、恵まれてて、本当にいいのかな? あ、そうだ……百万円の報酬はお断りしよう。学費と寮費と生活費まで負担してくれるって話だし、そのうえお金までいただくわけにはいかないから……。
 日奈子には献血の経験がないが、もらえるのは血液の検査結果と飲み物と、ほんの少しの菓子くらいだと聞いたことがある。
 いくらレアで美味しい血だとしても、四週間に一回……それも二百ミリ程度の血を提供するだけなのに、あれこれもらい過ぎだ。本当に罰が当たる。
 日奈子は一番風呂を堪能してからバスルームを出て、淡いピンクのバスローブ姿で髪を乾かした。
 湯冷めしないよう根元までしっかり乾かすと、ドライヤーの性能のせいか、或いはトリートメントのせいか、自分の髪とは思えないほどしっとり艶やかに仕上がる。
 すべてに感動しながらクローゼットに向かい、ドレスコーナーを見てみた。
 日奈子の体に合いそうなサイズのドレスが、色とりどり用意されている。
「うわぁ……お店に来てるみたい」
 感動のあまり独り言を口にしながら、春らしいピンクのドレスを選んだ。
 本当は何着か着てみて選びたかったが、皇牙を待たせたくないので急いで決める。
 ドレスに合うジュエリーをいくつか着けて、靴を選んで履いてみた。
 ヒールの高さはほどよく、サイズはぴったりだ。
 素顔のままだとドレスやジュエリーが似合わない気がしたので、ドレッサーに用意されていたピンクのリップを塗ってみる。