恐竜王の花嫁


「お誂え向きに今夜は満月だ。これから満月のたびに血をもらうことにしよう」
「あ……そうですね、満月ならちょうどいいですね」
「吸血が怖くないのか?」
「全然、怖くないです」
 皇牙さんのことを信じてますから──そう言おうかと思ったが、皇牙の何を知っているわけでもない今、わかったようなことを言うのは躊躇われた。
 けれども信じている。家族仲のよくない家で育ったという共通点があるこの人は、自分を大事に扱ってくれると信じている。
「そうと決まれば早速準備だね。日奈子ちゃん、まずお風呂に入って身を清めて」
「晴れてる日は屋上で行うから、風邪引かないよう髪を乾かしてね」
「根元までしっかり乾かすんだよ。ドレスと靴は好きなの選んでね」
「ジュエリーも忘れずにね。せっかく用意したんだからちゃんと使ってよ」
 D4に次々と言われ、日奈子は半ば混乱する。
 この場で血を吸われるのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
 入浴、髪をしっかり乾かす、ドレスを着てジュエリーを着ける、屋上に行く──と、一つ一つ頭に刻み込んでから、「はい、わかりました」と返事をする。
 なんでどうしてと訊いたりせずに、とにかく従うことにした。