恐竜王の花嫁


 皇牙は結衣花の腕をつかみ、ぐっと捻り上げる。
「いた……っ、痛い! なんでっ、なんでお姉ちゃんなんか庇うのっ!? 貴方本当に皇牙様なの!? おかしいわよ、お姉ちゃんが私の悪口を吹き込んだんでしょ!? 私は本当にファンなのに! お姉ちゃんなんか皇牙様のこと何も知らないのに!」
「これから知ってもらう予定だ。お前が知っている俺なんて問題にならないくらい、本当の俺をよく知ってもらう」
「……嘘よ! こんなの嘘! 悪い夢だわ、絶対夢だわ!」 
 皇牙が手を離すと、結衣花はその場に泣き崩れてしまった。
 心の声は相変わらず聞こえてきて、『許さない! 絶対殺してやるっ!』と繰り返し叫んでいる。早速頭が痛くなりそうだった。
「誤解のないように言っておくが、日奈子は誰の悪口も言っていない。お前の性格は顔に出てる。鏡を見るんだな」
「──っ、ひ、酷い……ぃや、いやぁ──っ!」
 悲鳴を上げて一層泣き叫ぶ結衣花を前に、皇牙は無情に踵を返す。
 日奈子の肩を抱くと、「荷物はそれだけでいいのか?」と優しく微笑んだ。


 キャンピングカーで竜王学園に向かい、到着した頃には午後八時になっていた。
 あまりにも濃密な一日に戸惑う日奈子は、学園の敷地内にある第一寮に通される。
 他の寮は男子と女子に分かれているそうだが、第一寮だけは性別で分かれておらず、皇牙と生餌四人衆、それから皇牙の秘書の九条綾人と、その生餌達四人が住んでいるだけだと説明を受けた。
「皇牙様、おかえりなさーい。日奈子ちゃんもおかえりーっていうか、ようこそ竜王学園へー」
「ようこそ第一寮へー」
「あちこち行って疲れたよね、部屋にお風呂あるからね」
「ここの寮はバスルームが相当いい感じだよ、期待しててね」
 高級ホテルのようなエントランスに圧倒される日奈子の前に、スタジアムで別れた生餌四人衆が再び現れる。
 にこやかな笑顔とカラフルな髪色を見て、日奈子は少しほっとした。
 リーダー的存在らしい赤羽から、「僕達四人のことはD4(ディーフォー)って気軽に呼んでね。ドナー集団だからD4ね」と言われ、そのまま口にしてみる。
 自分の中では生餌四人衆になっていたので、慌てて上書き修正した。