恐竜王の花嫁


 結衣花は竜人ではありませんように──そう祈った。
 皇牙さんの生餌に選ばれるのは私だけがいい──そう願わずにはいられない。
 自分は心が醜いのかもしれない。皇牙のファンでもなかったくせに、急に独占欲を持つなんて図々しいのかもしれない。でもどうしても祈ってしまう、願ってしまう。
 何か一つくらい、結衣花の持っていないものを持ちたかった。
 幼い頃から結衣花ばかり与えられるのを見てきて、嫉妬することもあった。
 これからはそういう醜い心から解放されたい。
 生餌として皇牙の役に立ちたい。
「皇牙様、お願いします! 遺伝子検査を受けさせてください!」
 結衣花は可愛い自分をアピールするように皇牙に迫り、彼の腕に触れた。
 次の瞬間、皇牙は結衣花の手を振り払う。
 それだけではなかった。
 まるでゴミでも見るような目で結衣花を見下ろし、「必要ない」と一言……結衣花の願いを突っぱねる。
「アタヴィズムと呼ばれる先祖返りは数百万人に一人の確率だ。一卵性ならともかく、二卵性双生児のお前がそれである確率は極めて低い。それにもしも遺伝子検査で陽性だったとしても、お前は要らない」
「……え?」
「生餌とは長い付き合いになるからな、性格で選ぶことにしている」
「──っ、な……なんで……そんなっ」
 皇牙の冷笑を受け、結衣花はカッと目を剥いた。
 可愛らしい表情を大きく崩し、日奈子に向かって手を振り上げる。
「お姉ちゃんね!? お姉ちゃんが余計なこと言ったのね!?」
「……っ、ぁ!」
『許さない! 殺してやる!』
 口に出している声に続いて、結衣花の心の声が届いた。
 極めて強く大きな声で、日奈子の頭に呪いの言葉が突き刺さる。
 しかし今回も引っ叩かれることはなかった。