恐竜王の花嫁


 父親も驚きながらソファーから立ち、皇牙の顔をまじまじと見た。
 生で見る皇牙の美貌に、誰もがぼうっと見惚れているようだ。
「竜王院皇牙です。ダイナ・リーグ・ジャパンの選手兼、副社長をしています」
 皇牙は大学生とは名乗らず、スマートな動作で名刺入れを出す。
 それを父親に渡すと、「単刀直入に言います」と断った。
「日奈子さんは非常に珍しい竜人の先祖返りだとわかったので、今日から私の生餌になってもらいます。すでに竜人としてのジーン・パスも取ってあります」
「先祖返り? え、つまり、その子が竜人ってことですか?」
「まさか、そんなわけないじゃないですか」
「お姉ちゃんが皇牙様の生餌!?」
 皇牙の隣で、日奈子は急いで財布を出す。
 写真つきのジーン・パスを引き抜いて親に見せようとすると、結衣花が一番に食いついてきた。
 日奈子の手からジーン・パスを奪い取り、「嘘でしょ!? こんなの嘘よね!?」と叫びながら凝視する。
「日奈子さんはすでに成人しているので、どこの学校に通おうとどこに引っ越そうと自由の身ですが、一応筋は通しておきます」
 皇牙は転校届けを父親に見せ、「こちらは日奈子さんが現在通っている学校の転校届けです。サインして提出しておいてください」とさらりと言った。
「転校!? 転校ってどういうことですか!?」
「お姉ちゃんが転校!? えっ、どこに!?」
「ジーン・パスを御覧いただければわかる通り、日奈子さんはすでに竜人です。人間の学校ではなく竜人の学校に……竜王学園に通うほうが自然なので、明日転校します。今後の保証人は私が務めますので御安心を。それと、生餌になってもらう謝礼として学費や寮費、生活費はすべてこちらが負担します。引っ越しは今夜中に行いますので御了承ください」
 皇牙が有無を言わせぬ勢いで説明すると、両親は「え?」「えぇっ?」としか言えなかった。誰より一番ショックな顔をしているのは結衣花で、「嘘よ! お姉ちゃんなんかが竜人のわけないじゃない!」とヒステリックに叫んでいる。
 皇牙は三人を相手にせず、「日奈子、大事な物だけまとめて。残りはあとで業者を寄越すから」と日奈子に微笑む。
 日奈子は「はい」と答え、まず先に結衣花の手からジーン・パスを取り戻した。
 そしてキッチンに向かい、付箋がたくさん貼ってある料理の本を五冊、棚から取りだす。