VIPフロアから駐車場に向かうエレベーターに乗り込むと、楽しかった気持ちが萎んで急速にテンションが下がっていった。
このあと、皇牙と一緒に家に向かうのだ。
『日奈子の家に決着をつけに行かなきゃならない』
彼は先ほどそう言った。
詳しく事情を話したわけでもないのに、おおむね察してくれている。
嵐のように自分を攫ってくれそうで心強い一方で、思い浮かぶ両親と結衣花の顔は怖かった。ざわっと鳥肌が立つほど恐ろしい。
鞄の中のスマートフォンは、今頃どうなっているだろう。
着信履歴と罵詈雑言のメッセージが並んでいるかもしれない。
三人とも夕食はどうしただろうか。デリバリーでも頼んだだろうか。
きっと怒っている。鬼のような顔をして、遅く帰った自分を怒鳴り散らすだろう。
──皇牙さんが一緒だから、怒鳴れない、かな? あの人達はいつだって世間体を気にするし、外面がいいから……。
キャンピングカーに戻ると、テーブルの上に書類が置かれていた。
日奈子の学校の転校届けだ。
いつの間にか用意されていたことに日奈子は少し驚いたが、皇牙の強引さを思えばそれほど不思議でもなかった。
「あの……スマホをちょっと、確認してもいいですか?」
「もちろんだ」
生餌四人衆がいないので、L字のソファーはがらんと空いている。
離れて座るのが自然であるにもかかわらず、皇牙は日奈子の隣に座った。
日奈子は恐る恐るスマートフォンを手にして、着信履歴やメッセージを確認する。
時刻は午後六時半だった。
部活などには所属せず、普段は早く帰って家事をする娘が帰ってこないのだから、普通の親なら怒るだけではなく心配もするだろう。
日奈子は少しだけ、ほんの少しだけ期待してしまった。
最初は怒っていても、最終的には『何かあったの?』『大丈夫なの?』『心配だから早く連絡して』といった文面になっていたりしないだろうか。もしそうだったら、楽しい時間を過ごしたことを申し訳なく思ったりもするのだけれど──。
