綾人は容赦なく巨大な後肢で敵を踏みつけ、喉首を狙って牙を剥いた。
日奈子は烏龍茶を手にしたまま身を震わせ、ダイナ・リーグが好きなルナや結衣花、そして両親のことを思い返す。
結衣花の好きなものなのでなんとなく反発心があって……自分はダイナ・リーグに興味がないというスタンスを取ってきたが、こうして観ていると面白いのがわかる。
これは確かに皆がハマるはずだ。熱狂するのも無理はない。
暴力的ではあるけれど、推している選手が勝っていれば嬉しいし、他のどのようなスポーツでも味わえない圧倒的な迫力がある。
「勝負はついたな」
皇牙が不遜な笑みを浮かべると、綾人の対戦相手に変化が起きた。
巨体に踏み潰されていた同じくらいの大きさの巨体から、シューシューと水蒸気が立ち上る。
「あ……っ、人間に戻るんですね?」
「ああ、降参ってことだ。敗者はこうして全裸の人間に戻る姿をカメラに収められ、屈辱的な思いをする」
スタジアムが最高に盛り上がる中、敗者は徐々に人の姿に戻っていく。
性器などは映らない角度で撮られていたが、裸の背中や臀部が見えていて、確かに屈辱的な姿に見えた。
「さすが綾人さん、立ち回りが上手い!」
「綾人さん、やった! 三千万円ゲット!」
「これはまたまた、お祝いしなきゃですねー」
「昨夜は皇牙様圧勝だったし、やっぱり凄い!」
綾人と、昨夜勝利した皇牙を称える生餌四人衆の横で、日奈子も一緒に拍手する。
ダイナ・リーグの面白さを認めるのは結衣花に対して少しばかり癪だが……正直な心臓はドキドキと鳴り響き、VIPフロアが暑く感じるほど興奮していた。
「今日はこれだけで帰るぞ。日奈子の家に決着をつけに行かなきゃならないからな。お前達は日奈子を迎える準備をしておけ」
皇牙の言葉に、四人衆は「はい!」「はーい」と明るく返事をする。
「日奈子ちゃん、靴のサイズいくつか訊いていい?」
「靴ですか? えぇと、二十四センチです」
「ありがとー、標準的だね」
なぜか靴のサイズを訊いてきた赤羽は、「じゃあ僕達は先に退散します」と言って、他の三人と一緒に去っていった。
