恐竜王の花嫁


 早く寝たいと思っても結局何かと遅くなってしまうのが、高校生でありながら家事全般を任されている日奈子の日常だ。
 しばらくして試合が終わり、竜王院皇牙が勝ったようだった。
 勝者が人間の姿に戻って、ヒーローインタビューを受けている。
 それが終わると番組が終了し、父親がチャンネルをニュース番組に変えた。
「あー最高の試合だった! 皇牙様ほんと強い!」
「勝ってよかったわよねぇ、格下相手だし絶対勝つと思ってたけど」
「格下の分ハンデがあるもん、皇牙様凄いよ、頑張ったよ!」
「はいはい、結衣花はほんとに皇牙様が好きねー」
「好き! 絶対結婚するからっ」
 結衣花は上機嫌でソファーから立ち、装飾過多なうちわを専用ボックスに戻す。
 すでに食事を終えて自分の食器を片付けていた日奈子は、「冷めてるじゃないか、温め直してくれ」と父親に言われ、「はい」と返した。
 味噌汁を温め直し、鶏の生姜焼きにはラップを掛ける。
 温かいうちに食べてほしくて丁寧に作った生姜焼きが、無機質な電子レンジの中でパチパチと音を立てた。
 家族は「いただきます」も言わなければ「ごちそうさま」も言わないし、ましてや「美味しかった」なんて絶対に言わない。
 楽しそうな家族の団欒の中に日奈子の居場所はなかった。
 食事中の結衣花から、「お姉ちゃんお風呂入れといて」と頼まれる。
 日奈子は風呂場に行き、浴槽を軽く洗って栓をした。
 風呂場の鏡に、疲れた顔をした自分が映っている。
 結衣花とは双子だが、二卵性なので顔も性格もまったく似ていない。
 結衣花が光なら私は影、結衣花が花なら私は草──そんなことをつい思ってしまうくらい、姉妹の容姿や立場は違っていた。
 風呂の順番を待ちながら自室で勉強をしていると、誰かが風呂から出たのがわかる。
 三人目が出たのでやっと自分の番だと思い、脱衣所に向かった。
 三人目は父だといいと思っていたが、生憎と母だった。