「日奈子、恐竜バトルは階級別に分かれていて、ラプター、ブレイブ、タイタン……そしてエイペックスの四階級がある。ティラノはもちろんエイペックスだ」
「……すみません、エイペックスってどういう意味ですか?」
「食物連鎖の頂点にいるという意味だ。いきなり一番いいのを観られてよかったな」
「は、はい。光栄です」
日奈子は烏龍茶を片手にフライドポテトをつまみ、緊張しながら試合開始を待つ。
紹介VTRが終わると、桜並木をバックに対峙する二人の竜人が映しだされた。
巨大恐竜が戦うフィールドは広く、どれだけ暴れても桜の木には影響がなさそうに見える。
自然環境への配慮を感じられ、日奈子はなんとなくほっとした。
試合開始のゴングが鳴る。
スタジアムは地響きのような熱狂に沸いた。
画面が二つに分かれて、選手それぞれの表情をアップで捉える。
竜人が恐竜化するシーンはダイナ・リーグのテレビCMなどで見たことがあったが、こうして最初からまともに見るのは初めてだった。
「竜人は空気中の水分を全細胞に蓄えながら巨大化していく。エイペックス級の場合、数トンまで膨れ上がるんだ」
「水分……なんですか」
「そう、湿気が多いほど簡単に恐竜化できる」
「湿気が多いほど」
「たとえば、釧路湿原なんかは最高だな」
「あ……なるほど」
巨大ビジョンに映しだされた九条綾人は、静かに目を閉じていた。
次の瞬間、彼の周囲の空気が激しく歪む。
綾人の全身から白い霧のような蒸気が噴きだして見えた。
けれども実際には逆で、空気中に含まれる水分が彼の細胞一つ一つに吸い込まれているのだろう。それも凄まじい勢いで──。
──うわ……っ、顔が……顔が変わってく!
バキバキという、硬い木の枝をへし折るような不気味な音が届いた。
